2012年09月27日

東京JAZZ FESTIVAL 2012

<東京ジャズ2012>が、今年も9月7日から9日まで、東京国際フォーラムで開かれた。

国内最大級のジャズ・フェスティバルとパンフにうたわれている。

主催は。
NHK、NHKエンタープライズ、日経新聞社。

後援は。
東京都、文化庁など。

会場は。
キャパ5000人の東京国際フォーラム、ホールA。
The Plaza(会場前広場)。
丸の内COTTON CLUB。

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ジャズフアンで賑わう会場前広場<The Plaza>

公式来場者数は。
The HALL 14,457名
The PLAZA 14,130名
The CLUB 963名
総入場者数 29,550名

野外のロック・コンサートには比べようもないが、3日間で3万名動員した。
近年、ジャズの人気が上昇しているというが、その証し!?

スポンサーは。
TOYOTA、PANASONIC、KDDI、YAMAHA、Daiwa House、MIZUHO銀行、大林組、三井住友海上・・・。

日本を代表する一流企業が<国内最大級>を支えている。
ジャズにこれだけの応援団がいるとはなんとも心強いが、願わくば、一極集中ではなく多極分散してほしい気がしなくもない。

ところで、肝心の出演者は。

 バート・バカラック
 ベン・E・キング+村田陽一BIGBAND
 ボブ・ジェームス・クインテット+松田聖子
 ジョー・サンプル・&ザ・クレオール・ジョー・バンド
 小曽根真+エリス・マルサリス、クリスチャン・マクブライト、ジェフ・テイン・ワッツ
*タワー・オブ・パワー
*バルカン・ビート・ボックス+SOIL&PIMP
*RUFUS+スガシカオ
 TAKE6
 エスペランサ・スポルディング Radio Music Society
 カシオペア3rd
 JAGA JAZZIST
 イブラヒム・マーロフ
 オズ・ノイ
 ギラッド・へクセルマン・カルテット+マーク・ターナー
 JILL-Decoy+平戸祐介、松岡matzz高広(quasimode) 
 大江千里

 And more・・・。


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(1)左から、小曽根真、クリスチャン・マクブライド、ジェフ・ティン・ワッツ

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(2)ベン・E・キング

ボブ・ジェームス&松田聖子(2)rs.jpg
(3)ボブ・ジェームスと松田聖子
(1)〜(3) (C)TOKYO JAZZ FESTIVAL 中嶌英雄/Hideo Nakajima



最大の目玉だった(と思う)ジャズ・ジャイアントのオーネット・コールマンが、体調不良で参加できなかった。
1930年生まれの82歳。
ナマで聴けるラストチャンスだったろうに、残念でならない。
モダンジャズ・フアンにとっては、これがジャズフェス?という顔ぶれで、やや不満もありそうだ。

ラインアップをみて感じることは、新旧、東西、ジャンルを問わず、今の世界のジャズ・シーンをよくここまでそろえたなあということ。
見事に網羅的。
いい意味でNHK的といっていいかもしれない。

これら出演者の名前をみて、ああ、あれか、と、すべてわかる人っているんだろうか。
一応、手元には出演者全部のプロフィールがあることはある。
紹介してもいいのだが、紙数がない。
興味のある方は、オフィシャルHPをご覧になってください。

以上。

以上って、これでおしまい!?
はい、これでおしまいです。

実は、ほぼすべての公演を聴くべく申し込んでいたのだが、突然の痛風の発作で、結局、9日の午後の部(*印のもの)しか聴くことができなかった。
聴かずに印象を書くのも気がひけるのであしからず。

ぼくの聴きたいと思っていて聴けなかった人(オーネット・コールマン/小曽根真/オズ・ノイ)もいたが、たまたま聴けてよかった人(スガ・シカオ/バルカン・ビート・ボックスとSOIL&PIMP)もいる。

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RUFUSと共演するスガシカオ
(C)TOKYO JAZZ FESTIVAL 中嶌英雄/Hideo Nakajima


また来年を、楽しみに期待するとしよう。

放送。
10/16(火)・10/23(火)・10/30(火) 各日23:45-25:14
NHK BSプレミアム


TOKYO JAZZ FESTIVAL 2012 オフィシャルHP


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2012年08月28日

Dream Jazz Band

8月12日
世田谷パブリックシアター
日野皓正 presents “Jazz for Kids”

このコラム3回目の登場です。
またかよ、と思われる向きもあろうかとは思うが、これって何回でもレポートしたくなるイベント。
不思議な吸引力をもったコンサート。
なぜか。
後を引く。

オリンピック中、濫発され、いささか色褪せた感なきにしもあらずの<勇気と感動>という言葉に、ここで新たな命が吹き込まれている。
そんな現場に居合わせているという実感が、聴衆の心を揺さぶり続ける。
心のそこから湧き上がる感動があり、勇気を与えてくれる。
これぞ<勇気と感動>だ。

すごいバンドがあるもんだ。

バンド名はDream Jazz Band、略して<ドリバン>。

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@フィナーレは、ドリバンに卒業生、講師陣も加わって全員集合の演奏となる。
ドリバンの演奏には教師陣や卒業生は入らない。

メンバーは、すべて世田谷区立中学校の生徒たち。
総勢50人。
4月から練習を始め、演奏会の行われる8月までに立派なジャズ・ミュージシャンになっている。
なかには、初めて楽器を手にする子どもだっている。

わずか4ヵ月で、こんなに上達してしまうのか。

驚異。
奇跡と言ってもよさそうだ。

子どもたちを指導した教師陣がすごい。
日本のトップ・ミュージシャンが勢ぞろいだ。

日野皓正校長tp/西尾健一tp/多田誠司as/守谷美由貴as/片岡雄三tb/後藤篤tb/荻原亮g/小山道之g/石井彰pf/出口誠pf/金澤英明b/田中徳崇ds/力武誠ds/グレース・マーヤvo/ほか

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Aドリバン演奏の前の<前座>をつとめた講師陣の演奏。
トップクラスの」ミュージシャンたちによる演奏は、鳥肌が立つほどの凄さ・・・。

講師陣の指導のせいもあるだろう。
しかし、実際に演奏するのは中学生たち。
講師は、手助けなんかしてくれない。
子どもたちだけで、早いのもスローなバラードも、かわりばんこに立つソロだって、立派にこなしている。

短期間でこんなに腕を上げてしまう子どもたちの、吸収力と咀嚼力、表現力にただただ圧倒される。

ジャズは難しい、と言われる。

新しさを追求し、変化にチャレンジする即興演奏は、特にそうだ。
ミュージシャンにとっては、だからこそ面白いということにもなるのだろう。
演奏することが面白く、面白すぎて、つい、聴衆のことなど忘れてしまう。

だが、そこで行われていることを、聴くものはなかなか理解できない。
もっとこっちを向いてよと思いながら聴いている聴衆が、ジャズが難しいと感じる一つの理由ではないかと、いつも思っている。
内向きにならざるを得ないのがジャズの宿命なのだ、と、なかば諦めながらいつも聴いている。

<ドリバン>の演奏は、そんな内向きのベクトルをいとも簡単に外向きに変えてしまっている。
舞台、客席をひとつの音楽空間に変える力を持っている。
たくまずして、ジャズの楽しさを聴くものにアピールしてくれている。

ジャズは楽しい。

のだ。

家族や友人など関係者もたくさん聴きにきているのだろう。
泣きながら聴いている人があちこちにいる。

こんなシーンもあった。
女の子が、トロンボーンでまるまる1曲ソロを吹く。

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B1曲通してソロをとった中岡さん。

最初、日野校長から、「そんな音じゃダメだ」とソロを認めてもらえなかった女の子。
「どうしてもやりたい」と、がんばってがんばって実現したソロ演奏だった。

彼女、無事吹き終わって号泣していた。
自分のからだよりも大きいトロンボーンにつかまり、しゃがみ込んで泣いていた。
日野さんも、うれしそうだったなあ。

この日、一番盛り上がった場面だったかもしれない。

ジャズは、泣ける。

ものでもある。のだ。

終演後、ステージには大仕事を見事にやり終えた達成感にあふれた子どもたちの表情が勢ぞろいしていた。

こんなに早い時期に、かくも大きな達成感を手に入れてしまって大丈夫かなあ。
そんな危惧が、ちらっと頭をよぎる。
つまらぬ取り越し苦労であればいいが。

なにはともあれ、来年もまた聴きにきたい。

ジャズは、美しい。
ジャズは、楽しい。
ジャズは、泣ける。

そんなことを教えてくれた、

<ドリバン>だった。

jazzforkids.JPG
C終演後の終了式。全員大満足。いい表情がそろった。

この日、TV局二社が密着取材に入っていた。
放送日はまだ未定。
興味のあるかたは、世田谷パブリックシアターのホームページをこまめにチェック。
http://setagaya-pt.jp/

写真@〜C
撮影:牧野智晃
提供:世田谷パブリックシアター
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2012年07月31日

世界をハグする ─ピアニスト、菊池太光さん

一見して(一聴してかな)、これはすごいなと思わされる人に出会うことがある。
そんな一人に、今評判のピアニスト菊池太光さんがいる。

菊池太光.jpg


一昨年、<PITINN>で初めて聴き、「おっ、こんなピニストがいたのか」という強い印象を受け驚かされた記憶がある。
以来、7回ほど彼のライブを聴いてきた。

どんなユニットとの演奏でも、最初の「おっ、・・・」という印象は変わらず、むしろ回を重ねるごとにその感じは強まっている。
ぼくのバカな耳でさえそう感じるのだから、これはやはり相当なもんだろうと思っていたが、あちこちから聞こえてくるミュージシャン仲間や耳の肥えたフアンの菊池評もおおむねそんなところで、ぼくの最初の印象が間違いではなかったことを証明してくれている。

演奏が上手い。
早い。
正確である。
表現力に富んでいる。

おおかたの菊池評である。

天衣無縫。
いつも明るくニコニコしている。
元気。
よくしゃべる。
意外に(失礼)礼儀正しい。
ピアノを弾いているのが楽しくてしかたがない。
楽しさに対する欲求が並外れて強い。

ぼくの印象である。(外見的だな。音楽とはまるで関係ない。なさけない)

<菊池太光>とはどんなミュージシャンなのだろうか。

HPには、プロフィールがない。
いくつかの質問を送ったが、回答してくれたのはプロフィールだけだった。

・・・1985年5月29日生まれ。
幼少よりクラシックピアノを習い始める。高校時代、オスカー・ピーターソンのCDを聴きジャズに傾倒。卒業後ジャズピアニストを志す。
現在、岡崎好朗カルテット、中村健吾トリオ、ピアノトリオGなどで、都内を中心に活動中。

これだけ。
まっ、いっか。
あとは勝手に想像してみるのも楽しいかもしれない。

この世界に飛び込むきっかけとなったというジャズ・ピアニスト、オスカー・ピーターソンを聴くと何かわかるかな。
家に一枚だけあった「NIGHT TRAIN」を聴いてみた。

堂々として迷いがない。
これぞジャズ、といった揺るぎない自信にあふれている。
ジャズのメインストリームを悠々と闊歩している。
少しばかり立派すぎるような気がしなくもない。

しっぽの先までエネルギーが満ち溢れている
とにかく元気な人
通りいっぺんの教養主義を寄せつけない心愉しい気迫に満ちている
「ただただスイングする」という一点にかけたまっすぐな情熱
(最後の四つは、村上春樹さんのピーターソン評{ポートレイト・イン・ジャズ}より。参考までに)

菊池さんは、この黒人ピアニストのどこに惹かれたのだろうか。

人が人に惹かれるわけなんて、そう簡単にわかるわけがない。
したがって、<菊池太光>とはどういうピアニストなのか、なんてそう簡単にわかるわけがない。
・・・わかるわけないだろう
ご本人だってきっとそう言うにちがいない。

ただ、こうとだけは言えそうだなと思えることがある。

この人はピアノを弾いているのが愉しくてしかたがない。のだ。
その愉しさを希求する欲望が並外れて強い。のだ。
その強烈な欲望から照射される目に見えない光線が、周囲の人たちの心と感応し、人々を楽しませ、ウキウキと心躍らせ、スイングさせる。のだ。

彼の発する摩訶不思議なエネルギーを、ぼくは勝手に<ハグ光線>と呼んでいる。

ハグ光線に照射され、聴く人は知らず知らずのうちに<菊池太光>のとりこになってしまう。

愉しくてこそジャズ。
美しくてこそジャズ。

一度ハグ光線にあたると、素直にそう感じられるようになる。

ハグするピアニスト菊池太光さんは、そんなミュージシャンなのです。


★菊池太光のスケジュール(FC2ブログ)



posted by 松ぼっくり at 00:00 | Comment(3) | TrackBack(0) | ミュージシャン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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