2012年12月14日

カオリン宣言 ─ビブラホン奏者、中島香里さん

中島香里さん。
本欄初のビブラホン奏者です。

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小さい頃からピアノとエレクトーンを習い始める。
中学で吹奏楽部に入部、パーカッションと出会う。
大学卒業時まで、部活、サークル活動でパーカッションの演奏を手がけ、同時に、音階のある鉄琴・木琴などのマレット・キーボードを好んで演奏する。
卒業後、赤松敏弘氏に師事、JAZZ理論とVibraphoneの4本マレット奏法を学ぶ。
現在、都内や首都圏中心にライブ活動を行っている。
リーダー・カルテット「VANGY!!」、フルートとのデュオ「Tirol Fonte」、三管にバイブ、パーカッション、ギターが加わった大編成バンド「Remembers」、ピアノ・ヴァイブ・パーカッションの変則トリオ「conviano」などで演奏。
癒しの音色と激しいプレイスタイルが持ち味で、幅広い表現力に定評がある。
カオリンの愛称で親しまれている。

ビブラホンって知ってますか?

あの木琴や鉄琴の兄貴分みたいな楽器でしょう。
学生時代には、ライオネル・ハンプトンやミルト・ジャクソンが好きでよく聴いてましたよ。
LPで。
オーディオ装置を「電蓄」(電気蓄音機)なんていってた時代ですがね。
よく知ってます。

と、思っていた。
中島香里さんをライブで聴くまでは。

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千葉みなとのライブハウス<CLIPPER>で、大きな楽器と格闘する中島さんを目の前で見て、初めてビブラホンという楽器が分かった。
ような気がした。
小さなからだをたたきつけるようにして演奏する中島さんに、いっぺんに魅了されてしまった。

ビブラホンという楽器。
見た目がいい。
音がいい。
なにもない空間から、ポロリポロリと音の粒が飛び出してくる。
演奏者のプレイスタイルが面白い。

・・・鉄独特の、高い空に抜けるような澄んだ音色が魅力です。一音を出すだけで、独特の景色が生み出される気がしています。

両手に持った4本のマレットが、目まぐるしく鍵盤上をかけめぐる。

右足が忙しくペダルを踏む。
足を使うということを、実は、ぼくは知らなかった。

・・・ただ叩いただけでは「ポン」という音しか出ない。8分音符という音の長さを表すためにペダルを使わないといけない。踏みっぱなしにすると音が濁ってしまう。そこが難しい。

複雑にして精妙。
よく間違えずに、正しいポジションをたたき続けることができるもんだ。

「右に50本、左に50本もある己の足を、いったいどういう順番で動かして前に進んでいるのだろう。そう考えたとたん、そのムカデは一歩も歩けなくなった。つまり、何も考えずに、生物は目の眩むような複雑さをこなしながら生きているのだ」

という話を読んだことがある。

中島さん、演奏中、次はどこの鍵盤を、どのマレットで叩き、どのタイミングでペダルを踏もうか、なんて考えたりしないのだろうか。

何も考えずにかくも複雑なバチ捌きができるようになるまでに、どれほどの練習がなされてきたのだろうか。
厳しいトレーニングが繰り返されたのだろう。

そんな努力のあとなど少しも見せずに、中島さんの手足は自在にビブラホンの上を、「蝶のように舞い、蜂のように(聴く者の心を)刺す」。

ビブラホン独特の美しい音は、そう、聴く者のハートを刺し貫く音でもあるのだ。

参りました。

「ビブラホンは、演奏者の絶対数が少ない楽器なだけに、個人間のカラーの対比・葛藤がより鮮烈である。一人一党的な要素が色濃くでる」(村上春樹「ポートレイト・イン・ジャズ」)楽器らしい。

個人の感性や思い入れが強く発揮される楽器。
一人一党的な楽器。

・・・スイングしたい。いい音色で。いいグルーヴで。
聴衆がぐっとくるような音楽をやっていきたい。


これが<カオリン党>の綱領でありマニフェストだ。

めずらしい楽器ゆえまだ少数党の感なきにしもあらずだが、入党をおすすめしますよ。
入会自由。
ただし、一度入ると抜け出せなくなるおそれがあるのでご用心を。

プロフィールにあるとおり、癒しの音色とそれに反する激しいプレイスタイルが持ち味のミュージシャンです。
まずはライブへ、ぜひ。

★中島香里ブログ「のんびぶらーと」

音楽 中島さんオリジナル曲「Flying Mind」視聴できます!


《ライブ・スケジュール》
・12月30日(日)大塚 All in Fun
conviano:岸淑香pf/中島香里vib/藤橋万記per

・1月6日(日)大久保 Boozy Muse
中島香里vib/安田幸司b/安藤正則ds

・1月22日(火)銀座 No Bird
VANGY!!:中島香里vib/後藤魂pf/吉木稔b/安藤正則ds

・1月26日(土)福生 Jesse James
中島香里vib/吉本章絋ts Duo

・1月27日(日)江古田 そるとぴーなつ
conviano:岸淑香pf/中島香里vib/藤橋万記per


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2012年11月15日

はにかみ王子 ─ギタリスト かむろ耕平さん

ギタリスト、かむろ耕平さんです。

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1984年、東京生まれ。
中学2年の時、アコースティックギターを始め、その後ロックに傾斜。
バンド活動のかたわらヤマハ音楽教室で基礎の音楽理論やアドリブを学ぶ。
高校3年生の時、Berklee College of Music(バークリー音楽院)の奨学金を得、卒業後渡米。
在学中は、ジャズの即興演奏を中心に、Hal Crook、Dave Santro、Sheryl Bailey、Bruce Saundersの各氏に学ぶ。
卒業後2年間、ニューヨークでセッション活動を行い、さまざまなミュージシャンと共演。
2009年、帰国。
現在、都内を中心に自己のバンドでジャズ系のライブ活動を行っている。
将棋の対局観戦が大好きで、ときにギターの練習を忘れる。

2年ほど前、守谷美由貴さんのバンドで何回か聴いた。
あれは、バークリーから帰ってきたばかりのころだったのか。

控え目で、少し恥ずかしそうに弾いている、という印象をいつも受けていた。
そんな様子が妙に気になり、<かむろ耕平>を強く意識させられた。

今年の10月、市川のライブハウスで1年ぶりに彼の演奏を聴いた。
守谷さんのライブに、飛び入りで演奏していた。

印象は変わっていなかった。
上体をやや折り曲げて弾く演奏スタイルも、ソロの時でもどこか控えめな様子も、以前と変わっていなかった。

いつも控え目。
それがこの人の特徴であり、この人の魅力にもなっている。

万事控え目、ゆえにかえって目立っている。
不思議なキャラクターのミュージシャンである。

そんな<かむろ耕平>が、ぼくはどうやら好きらしい。

かむろ耕平の弾くギターが好きなのか、
ギターを弾くかむろ耕平が好きなのか。

よくわからんが、おそらく両方なんだろう。

一風変わった魅力を持ったギタリストである。

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1年前、彼の音楽観や目指す方向などについていくつかの質問を送った。
答えはもらえなかった。

・・・まだミュージシャンというものに半ば憧れてるだけ、のような感じなので、少し語るのも恐ろしかったんですが、それも小さな自惚れだったかなとも思います。

と、最近のメールで答えてくれた。

早熟なミュージシャンの若々しい自負と、待ちかまえる未知なるものへの怖れがないまぜになった、<かむろ耕平>らしい心情の吐露と、読みました。

外向きのベクトルをもった高圧マグマを、内に大量に抱え込んでいる。
それが噴出する日が、いつか必ずやってくる。

芯の強さを秘めたミュージシャン。
そんな気がしてならない。

釣と猫が大好きだ。

捨てられていたノラを拾って育てている。
少し前の写真入りブログに書かれている。

・・・こいつは先々月あたりに生まれ、捨てられるも拾われ、家に引き取られたラッキーボーイ。毎日食って遊んで糞して寝るを繰り返している。
存分にやってくれ!


釣に行きボウズ(釣果ゼロ)だった時に出会った別のノラには、

・・・すまん。何もないんだ。小イワシ一匹も。ボウズなんだ。サヨナラ。

岸壁らしきところにうずくまるノラが、なんとも憐れで去りがたい。
添えられた写真が、撮影者のそんな思いを伝えている。

「この先、ただの猫ブログになっていきそうな」と嘆いている(喜んでいる)カムブログ。

この人の文章は、音楽家らしいリズム感と思いもよらぬ言葉の用い方が独特で面白い。
この人のギターを特徴づけている聴くものの心をくすぐり、かき回し、気をひき、こちらがその気になるとふっと離れていく。
聴いている人間を翻弄する不思議な<言葉使い>と、どこか共通するものがありそうだ。
先日、<リメンバーズ>というグループで弾いていた彼の演奏を聴きながら、そう感じていた。

かむブログ。
更新頻度が高いとはいえないけれど、一読をおすすめします。
そして、ぜひライブを聴いてみてください。
彼の魅力がよくわかるはずです。

心やさしきはにかみ王子。

かむろ耕平さんでした。

☆かむろ耕平ブログ<かむブログ>

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2012年10月16日

ちょっと不機嫌 ─ジャズ・ドラマー横山和明さん

ジャズ・ドラマー、横山和明さんです。

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1985年3月生まれ。
静岡県静岡市出身。

両親の影響で幼少のころから音楽に親しみ、ドラムを始める。
中学生のころから地元で演奏活動を始め、吉田桂一、吉岡秀晃、松島啓之、荒巻茂生、富樫雅彦など、多くのミュージシャンと共演を重ねる。

高校卒業後上京。
現在は、都内のライブハウスを中心に演奏活動を行っている。

2002年より、渡辺貞夫のツアーに参加。
Junior Mance、Barry Harrisなどと共演。

2012年8月、アメリカ<サンノゼ・ジャズフェスティヴァル>に宮之上貴昭(g)グループの一員として出演。好評を博す。

いつも何かに怒っている。
感情を表に出さず、わずかな不機嫌さを漂わせた表情でドラムを叩いている。

柏の<NARDIS>でも、吉祥寺の<SOMETIME>でも、沼袋の<オルガンJAZZ倶楽部>でも、この人はいつも何かに怒っているように見えた。

<不機嫌なジャズ・ドラマー>

いつもそう思いながらながら聴いていた。
それが、逆にこの人を強く印象付けていた。

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不機嫌さが魅力。
不思議なキャラクターのミュージシャンがいるものだ。

今から半世紀ほどむかしの1950年、60年代は、世界中の若者たちが怒っていた、そんな時代だった。

50年代、イギリスでは、<怒れる若者たち>が文学を中心に大きな社会的ムーブメントをまきおこした。
アラン・シリトーは「長距離走者の孤独」や「土曜の夜と日曜の朝」を書き、不当な社会的差別に抗議の声をあげた。

同じ時代、アメリカでもカウンターカルチャーの大きな渦が国中を吹き荒れる。
この渦は、国境を超え、世界中へ広がっていった。
ビート・ゼネレーションを代表するジャック・ケルアックは「路上」を書き、ヒッピーの圧倒的な支持を受け、映画「イージーライダー」は世界的なヒットとなった。

ジャズもまた、それまでのシート・ミュージックに飽き足りない黒人ミュージシャンを中心に新しいスタイルを目指す試みが、ニューヨークで生まれてくる。
ビバップがやがてハードバップへと進化し、またクール・ジャズやモードなどが登場し、モダンジャズへの道がひろがっていった。

40万人を集めた69年の<ウッドストック・フェスティバル>は、人間性回復のための集会と位置づけられ、この時代の流れの集大成となる。

<怒り>が社会的・文化的ムーブメントの大きな原動力になっていた。

今の若者は、あまり怒らない。
いやそうでもないか。

アメリカでは貧富の格差拡大に抗議する<99%デモ>が、ワシントンから始まり、地方都市へとひろがっている。
<アラブの春>は、いくつかの国の政体を変えた。
ロシアでは、反プーチン・デモが行われ、中国では、残念ながら反日デモが荒れ狂う。

日本の若者は、総じておとなしい。
草食系男子がもてはやされる。

怒らない。
かわりによくキレル。

いつも何かに対して怒っているような横山さんは、だから、よく目立つ。
いったい、何に対して怒っているのだろうか。

沼袋では、蝶ネクタイ姿を披露してくれた。
ライブハウスで見た初めての蝶ネクタイだった。
道具立ての大きな顔。
もみ上げを長めにのばし、気が強そうな一重まぶたの下から強い目が光っていた。
蝶ネクタイは、<憂鬱なダンディズム>を漂わせる横山さんによく似合うファッションだった。

寡黙で、静かでいて、その存在が常に周囲に微妙な圧力波を発信し続けている。
見るたびに「気になる度」が上がっていく。

怒ってなんかいませんよ。
不機嫌なんかではありませんよ。


ご本人はそうおっしゃる。

実際は、暖かな、心優しい人なのかもしれない。

どちらがほんとの<横山和明>なのか、ぼくらにはわからない。
わからないが、ライブを聴きながらそんなことを想像させてくれるミュージシャンなんて、ほかにいない。

いつまでも、不機嫌な<怒れる若者>であってほしいと、勝手ながら熱望している。

横山さんのジャズ観を紹介するのを忘れるところだった。


今ジャズに何か新しい流れがありますか?
・・・新しい流れや現代的な解釈、表現というのは常にあり、音楽もプレイヤーも進化し続けています。
日本では、このところ20-30代の力のある素晴らしいプレイヤーが急激に増え、今、非常に面白くなってきています。
コンテンポラリーな要素が強い人が多いですが、トラディショナルなものに対するリスペクトや愛をしっかり持った上で現代的な表現をしている人が多い。
みんな素晴らしいです。


ジャズの魅力は?
・・・言葉にするのは難しい。
ぼくにとってあまりに身近な存在なので考えたこともない。
何故好きなのかよくわからない。
おいしいものを食べると理屈抜きに感動しますよね。あれと同じ。
構えて難しく考えがちですが、もっと感覚的に摑もうとしなければよくわからないものかもしれません。


目指している方向は?
・・・もっと広く優しく美しい世界を知りたい、もっと大きなグルーヴで包み込んでみんなを踊らせたい。


ぼくのありきたりな質問にも、手抜きせず懇切丁寧に答えてくれた。

前向きで、誠実、正直で、情熱的な人。

<横山和明>は、そんな人だった。のかもしれない。

☆横山和明のblog
※10月のライブスケジュールはこちら
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