2011年12月22日

2011年JAZZ・CDベストセラー

2011年のジャズCD売り上げランキングです。
ほかにデータらしきものがなく、今年もまた<タワーレコードTOP40セラーズ>からの紹介となりました。

<JAZZ JAPAN>が、毎月、タワーレコードと山野楽器の月間売り上げランキングを掲載しているが、内容は、TOP40セラーズと同じようなものなので、そちらはネグります。


1. 上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト <ヴォイス>
2. Tony Bennett <DuetsU>
3. Wynton Marsalis ,Eric Clapton <プレイ・ザ・ブルース>
4. Pat Metheny <WHAT'S IT ALL ABOUT>
5. Bill Evans Trio <Waltz For Debby>
6. Miles Davis <Kind Of Blue>
7. Willie Nelson ,Wynton Marsalis ,Norah Jones <Here We go Again>
8. Norah Jones <ノラ・ジョーンズの自由時間>
9. Miles Davis <Real Miles Davis>
10. Various Artists <JAZZ FOR JAPAN>
・・・
14. 山中千尋 <レミニセンス>
16. Sonny Clark <Cool Struttin'>
17. John Coltrane <A Saint〜JOHN COLTRANE ALL TIME BEST>
・・・


古いジャズフアンにとってうれしいのは、例年、マイルス・デイビスやジョン・コルトレーン、ビル・エヴァンスなどが必ずランクインしていること。
その傾向は、今年も変わっていない。
日本の社会と同じで、ジャズの世界も、フアンの高齢化、支持者の多くが保守的であるということなんだろうか。

このデータになにを感じるかは人それぞれだが、少なくともこのデータが、今の日本のジャズシーンの実相を反映していると思う人はいないだろう。

ジャズにかぎらず、音源の入手方法が以前とはまるで変わってきてしまっている。
ショップでCDを購入するかわりに、ネットを通じてバラで、あるいはYouTube経由で入手するというケースが多くなってきている。

ジャズシーンの実相は、ショップの売り上げランキングにはあらわれない。
それは、世界中にはりめぐらされた<蜘蛛の巣>のなかにかくされている。

今年も多くのジャズCDが作られた。
それらがどのような経路をたどってリスナーの耳に届いていったのか。
若いミュージシャンたちの音楽の流れは、蜘蛛の巣の糸をたどっていくことによってしか見えてこない。

<蜘蛛の巣>上のデータをかき集める方法がないものだろうか。
そいつを探してみたい。と思ったりもする。

2011年もおしまい。
ミュージシャンやジャズフアンにとって来年がいい年でありますように。
日本が、あんまりひどいことにならないことを願いあげます。



おっと、忘れていた。
2011年のスペシャル・サンクス。

よかった。 
ありがとう!!!!!

【CD】
■「ブルースウェット」(ベニー・ゴルソン/カーティス・フラー)
車に乗るたびに車載HDで聴いていた。ゴルソンのサックスとフラーのトロンボーンになんど癒されたか。

ブルースエット / カーティス・フラー, ベニー・ゴルソン, トミー・フラナガン, ジミー・ギャリソン, アル・ヘアウッド (演奏) (CD - 1996)


■「秘宝感・HIHOKAN」
<渋さ知らず>を超えた?怪バンド。収録時たまたまそこにいて感じた興奮が、そのまま聴き取れる。感じ取れる。

秘宝感 / 秘宝感, 斉藤良(ds), 纐纈雅代(as), スガダイロー(p), 佐藤えりか(b), 熱海宝子(秘) (CD - 2011)


【本】
■「音楽史を変えた五つの発明」
難しい音楽理論につまずくことなく、音楽の不思議な世界にわくわくしながらはいっていける。

音楽史を変えた五つの発明 [単行本] / ハワード グッドール (著); 松村 哲哉 (翻訳); 白水社 (刊)


【blog】
今泉総之輔ブログ http://ameblo.jp/sosodrums/
はじめたばかり。ライブを聴いているようなリズム感あふれることばの運びが独特で面白い。学校では教えてくれないだろう、頻発する「ill」と「dope」の意味を、フィーリングを知りたい。

佐藤えりかのブログルグル http://yaplog.jp/blogroove/
・・・職業:<小学生未満>。最高のコピーでしょう。

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2011年10月14日

悩める若者たち

半世紀以上前のことだが、イギリスに<怒れる若者たち>がいた。
ジョン・オズボーンやコリン・ウィルソン、アラン・シリートーらの文学運動に端を発し、社会運動にまで広がり、世界中の若者に影響を及ぼした。
今回は、日本の<悩める若者たち>である。

インタヴュー・カルチャー・マガジン<SWITCH>8月号が、ジャズの特集を組んでいた。

SWITCH Vol.29 No.8(2011年8月号) 特集:新訳ジャズ [大型本] / 新井敏記 (著); 菅原豪 (編集); スイッチパブリッシング (刊)

かつては、<月刊PLAYBOY>などがジャズ特集を組んでいたが、この雑誌も、もうない。
残念なことだが、ジャズを扱うメディアが少なくなってしまった。
わずかに残されたジャズ専門誌は、業界外への発信力が弱く、そのための試みにも無関心である。ように見受けられる。
専門誌は、こういっちゃ申し訳ないが、「業界誌」ないしは有料の「業界回覧板」みたいなもんで、せまいジャズシーンをますます狭めることに熱心で、ジャズ・ファンからさえもそっぽを向かれかねないのが現状だ。
だから、一般誌が、時にジャズ特集を企画してくれるのは、ジャズ・ファンにとっては、ほんとにうれしいことなのだ。
ジャズに対する好奇心がまだまだ存在しているということの証でもあるわけで、もっと頻繁に取り上げてもいいんじゃないかと、これはま、ぼくの勝手かつ心から
なる願いです。

注目すべき記事がある。
有名ミュージシャン中心の専門誌では決してお目にかかることができないもの。
若手ミュージシャン6人による座談会だ。

「ぼくらに未来はあるのか」

フレットレスベースの織原良次さんの肝いりで実現した企画である。
出席者は、早川惟雅as、井上銘g、須川崇志b、石若駿ds、若井優也p。

31歳の織原さんが最年長で、10代の石若さん以外は全員20代。
今のジャズシーンを支え牽引している、誰もが認める実力派ばかりである。

ちなみに、若井優也早川惟雅井上銘の3人は当コラムで紹介済みだし、織原良次さんは前々回登場願った。石若駿、須川崇史のお二人にもお願いしている。近々ご紹介できるだろう。
このコラムは、いまをときめく若い才能をほぼパーフェクトにカバーしている。
担当者たるぼくの目もすてたものではない。
ということはまったくなくて、なに、みんなミュージシャンの紹介によるもの、当方の眼力とはなんの関係もない。

前置きが長い。
座談会の話だった。

座談会を読むと、全員がいまのジャズシーンに対する危機感をもっていることが、よくわかる。

・・・クラシックに比べて、ジャズを聴く人が圧倒的に少ない
・・・若い人が聴いてくれない
・・・年配者か楽器をやっている人しか聴いてくれない
・・・レストランや飲み屋のBGMになってしまっている
・・・ジャズは地味だし、抽象的だ
・・・発信力が弱い

確かにそのとおりだろう。
そうかもしれないが、といって、グチを言っても始まらない。
意地の悪い言い方かもしれないが、そんなことわかって入ってきた世界じゃないんですか。

クラシックのリスナーが多いというけれど、コンサートでは、クラシックもジャズもよく入っている。
先日の東京JAZZフェスでは、キャパ5千人の東京国際フォーラムが、三日間満員だった。
BGM?
いいんじゃないですか。
需要があるというのは、素晴らしいことだ。
なけりゃ、BGMだって流されない。

とはいえ、現状、キビシイッ!! のは認めざるをえないだろう。
冷静に見れば、冷静に見なくとも、時に悲観的になるのも無理はない。

ぼくらに未来はあるか?

あるかもしれないし、ないかもしれない。
そんなことは誰にもわからない。
だから面白いんじゃないですか、という発言もある。
結局は、自分たちで打開していくしかないんだよな。

9月末、バークリーに留学する早川惟雅さんがこんなことを言っている。

・・・向こうでは、実はプレイヤーとしてではなく、音楽マネジメントとかプロデュースのことを勉強したい

かつ目すべき発言でしょう。
マネジメントやプロデュースの勉強に行く。
こんなことを言って、バークリーに行った人はいない。

こんな発言が飛び出すほどに、ジャズをとりまくインフラは貧弱なんだ。
制作面においても、流通・販売面でも、音楽インフラはあって無きがごときが実状でしょう。
音楽としてのジャズそのものの力だけでは、ひろがりに限界がある。
音楽インフラの新しい展開なくして発展は期待できない。
早川さんは、そこをなんとかしなくてはという、従来のミュージシャンにはない視点を持って留学する。
なんとも頼もしい。

名前のクレジットにこだわらずに出した、若井優也さんプロデュースのCD「しあわせな夢のジブリ」も良く売れている。
先ごろ、二枚目が発売された。

未来は切り開くしかない、んだよね。

しあわせな夢のジブリ / オムニバス (CD - 2011) 音のサプリメント#35 しあわせな森のジブリ / オムニバス (CD - 2010)

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2011年09月30日

TOKYO JAZZ FESTIVAL 2011

tokyoJAZZ-1.jpg

9月2日〜4日
東京国際フォーラム ホールA

(2日)
菊地成孔DCPRG/ラウル・ミドン
(3日)
カウント・ベイシー・オーケストラ/寺井尚子&リシャール・ガリアーノ ザ・ピアソラ・プロジェクト(イタリア)/ミシェル・ルグラン・トリオ/quasimode/インコグニート/上原ひろみトリオ アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップス
(4日)
ケニー・バロン トリオ 北川潔&ジョナサン・ブレイク/上原ひろみ×熊谷和徳 タップ/セルジオ・メンデス/日野皓正SPECIAL PROJEKT 佐藤允彦 dj honda 石井彰 日野JINO賢二 須川崇史 田中徳崇 矢野沙織 荻原亮/TOKYO JAZZ SUPER GUITAR SESSION リー・リトナー マイク・スターン 布袋寅泰 ジョン・ビーズリー メルヴィン・デイヴィス デイヴ・ウエツクル/DMS ジョージ・デューク マーカス・ミラー デヴィッド・サンボーン



チケットはすべてソルドアウト。
5012人入るホールが、三日間満員になった。
日本人ってこんなにジャズが好きだったのか。
おどろいた。
そして、うれしかった。

料理にたとえるのもなんだが、肉なら肉、魚なら魚をじっくり味わいたいという一品堪能主義のぼくのようなものには、つぎつぎと料理が出てくる懐石料理のようなジャズフェスには、なんとなく食指が動かなかった。
食わず嫌い、でした。
音のシャワーをたっぷりと浴び、「ジャズ力」を200%体感させられた三日間で、ジャズフェスをすっかり見直していた。
こんなにも楽しく聴けたのは、連日お付き合いいただいたジャズ・ピアニスト松本あかねさんの、ポイントポイントでのツイートのせいもある。
おかげで、10倍ジャズを楽しむことができた。

今年のJFは、なんといっても上原ひろみさんでしょう。

1HN_8655-2.jpg
(c)Hideo Nakajima

彼女の演奏は、数年前、武道館でチック・コリアとのデュオを一度聴いただけ。
よく知りもせず、またわかりもせず、「アクロバティックなピアニストなんじゃないか」と、ずっと思いこんでいた。
彼女の二日間の舞台で、そんな思い込みはどこかへ吹き飛んでしまった。

観たり聴いたりしたあとで、なにか一理屈言わなければならないようなものにたいしたものはない、と言われるが、まさにそのとおり。
あまりのすごさに、ただただ圧倒されるばかり。
台風一過、頭のなかの雑念はきれいサッパリ洗い流されて、まっさらな真空状態になっていた。
なるほど、すごいものには一理屈言いたくなるなんて余裕などないんだ。

タップの熊谷和徳さんとのデュオも素晴らしかった。

2HN_0136-2.jpg (c)Hideo Nakajima

異業種混合みたいなピアノとタップの「コール&レスポンス」が、ちゃんと成立している。
成立しているなんてもんじゃない。
ときにはやく、ときにゆっくりと、呼びかけ、受けこたえ、一の問いに十返し、十の呼びかけに二十の返事がくる。
見たこともない新しい表現空間に、5000人の観客が息もせず(しているが)舞台に釘付けになっている。

上原さん、年間100日150回の演奏を、世界中のどこかでやっていると、週刊文春の阿川対談で話していた。
熊谷さんも、舞台は世界に広がっている。
いいものはいい。だれが見てもいいものはいい。
当たり前のことを骨の髄まで知らされた。


もうひとつの驚きは、ケニー・バロン・トリオ。

2HN_9939-2.jpg (c)Hideo Nakajima

古いジャズフアンでも、いま、この人の名前をいう人はほとんどいない。
正直なところ、なんでいまさらという気がしなくもなかった。
聴き始めておどろいた。
すっと出てきて、いきなり弾き始める
前置きもなんにもない。いらないんだ。
そして、すぐに引き込まれてしまう。
ケニー・バロンは、そこにいるだけでジャズだった。
ジャズがそこにある。
ジャズを見た。
そんな気がした。

「いまぼくは、癒されている」
あるライブを聴きながらそんな感じになったことがあると、村上春樹さんがどこかに書いているが、それはこんな感じではなかったのだろうか。
ケニー・バロンのゆったりとしたピアノに、心が洗われる。


楽しみにしていたquasimodeも頑張っていた。

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(c)Rieko Oka

観客をのせるべく、最初から飛ばすこと飛ばすこと。
いきなりの全力疾走だ。

しばらくして気がついた。
「あれっ、なんか音が小さいんじゃないか」
メンバーもすぐに気がついたようで、PAに合図し、音を上げていた。ように見えた。

5000人の大ホールと、数100人のジャズクラブでは、演奏する環境がちがうということか。
まあ、これも経験でしょう。
立ち直りも早い。
すぐに客を立たせての、いつもの演奏にもどっていた。


のせ方のうまさという点では、外国人ミュージシャンである。
インコグニート、セルジオ・メンデスの演奏に、観客は知らぬ間にのせられ、総立ちで手を振り、からだをゆさぶり、踊り始めている。

oka_2415-2.jpg (c)Rieko Oka

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(c)Rieko Oka

日野さんが、懸命に呼びかけながらもいまいちのせきれない。
この差はなんだ。
これも、ジャズの歴史なのか。


主催者に注文をひとつ。
日本の若いジャズ・ミュージシャンが出演する機会を、作っていただきたい。
舞台でなくとも場所はある。
会場前広場という、うってつけの場所があるではないですか。

jazzfes 004.jpg

日に一組でも二組でもいい。
ジャズシーンを盛り上げるためにぜひ考えていただきたい、と願う次第です。


TV「東京JAZZ 2011」放送予定
【NHK BSプレミアム】
10月15日(土)
午後2時00分〜3時30分
午後3時30分〜5時00分
午後5時00分〜6時30分

posted by 松ぼっくり at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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