2012年06月28日

無色多彩 ──小鼓 石井千鶴さん

小鼓、石井千鶴さん。

演奏案内絵201202.jpg

フライヤーにそえられた自筆のイラスト。
彼女に魅せられ思い思いの色を書き加えていく。

6歳で邦楽囃子を始め、福原鶴祐師、望月太喜雄師に師事。
東京芸術大学で邦楽囃子を専攻、同大学院で博士号を取得。

長唄・筝曲など古典の演奏活動のほか、ジャズバンド<東京民族音楽>や<秘宝感>、坂田明<平家物語>ライブなどジャズ・ミュージシャンと共演。
現代詩と音楽による演奏団体「VOICE SPACE」として、詩人谷川俊太郎、佐々木幹郎、矢野顕子、二代目高橋竹山、小室等氏らと共演。
市川染五郎氏と古典の舞台での共演もある。
幅広いジャンルでの活躍で注目されている。

大河ドラマ「平清盛」「義経」「篤姫」、「題名のない音楽会」などに出演。
アカンサス音楽賞、常英賞、和洋楽コンクールグランプリ、読売新聞社賞を受賞。
長唄協会所属。

邦楽を主たる活動の場としつつ、異分野との交流にも意欲的だ。

小鼓奏者がなんでジャズ?
だれもがそう思う。

「伝統」という巨大な重力が支配する邦楽の世界に嫌気がさし、その重力圏を飛び出して未知なる世界を自由に飛びまわりたい。
というわけでは、もちろんない。

・・・古典の演奏をきちんと習得して、他の分野の方に提示したり、ぶつけ合ったりしたい

軸足は「邦楽」と心に決めている。

その上でのジャズである。

・・・ロックやポップス、テクノなどにもかかわりたい

と、ひたすら前を見据える。

欲張りなんでしょう。この人は。
表現の世界では、欲張りは美徳でしかない。
気にすることはない。
気にもしてないでしょうが。


石井さんを初めて観たのは、<秘宝感>の舞台だった。
「変態するジャズ編隊」(都築響一)として昼のピットインが満員になるこのフリージャズ集団の凄さ面白さに度肝を抜かれた。
さらにさらに、スガダイローp、斉藤良ds、纐纈雅代as、佐藤えりかb、熱海宝子? という洋楽器編成の中で、ひとり小鼓を打つ石井さんにも、強烈な印象を受けた。

個性がぶつかり合い煮えたぎるブイヤベース的寄せ鍋的空間に、ひとり、すっくと立っている。
長身にしてプロポーション抜群。
毎回、工夫を凝らした衣装が素晴らしい。見て楽しい。

シュールであり、ポップである。
今様であり、SFチックである。
和があり、洋がある。
過去であり、未来である。

・・・自分が観る側にいるときも、サービス精神にあふれた服装をしている人が好きです

その精神をみずから実践している。

破調にして調和。
異にして同。
堂々としてゆるぎない。

<秘宝感>世界の一民族として、違和感なくそこにあり、屹立している。

石井千鶴01.jpg
<秘宝感>舞台の石井千鶴さん

今年の春、ボストン美術館から里帰りして評判になった曾我蕭白の着彩画を思い出す。

墨一色の風景のなか、人物だけに色が置かれている。
といって、そこだけが強調されているのではない。
墨と色が、微妙なバランスで調和されている。

ぎりぎりまでの誇張と省略。
奇想、奇抜、大胆な開き直り。
劇画的表現を先駆的に行っていたゴンゾ・アーティスト<曾我蕭白>にして作りあげることができた世界。

石井さんの参加によって、ゴンゾ・ミュージック集団<秘宝感>に彩が一つ加えられた。

白紙に未来をえがける意欲と才能、と、だれかが言っていた。
セルフプロデュース感に恵まれたひと。

知らぬ間に、あたり一面、石井千鶴的な何かによって充たされている。
宇宙の97%を占めている未知だが確かに存在するあの<ダークマター><ダークエネルギー>みたいな人なんだ。
この石井千鶴さんという人ひとは。

妙によそ行きの文章になってしまったが、つまりは、それがまたこの人の個性でもあるのだろう。

石井千鶴04.jpg
石井千鶴のもう一つの世界


残念ながら、黒紋付でつとめるという邦楽の演奏を聴いていない。
興味津々。
近々、お邪魔しよう。

DSC_0709.jpg
これぞそもそもの石井千鶴さん?かどうかはわからない。

話題の「平家物語」を観た。(坂田明as、cl/田中悠美子 義太夫三味線/石井千鶴 小鼓、締め太鼓/山本達久ds、per/ジム・オルークg)

坂田明さんが「平家物語」を読み、うなり、吠える。ギャグが飛び出し、声帯・形態模写で笑わせる。
合間をsaxがつないでいく。
顔を真っ赤にしての熱演は、魁にして怪。

石井さんはとみてやれば、巫女に似た白の衣装を身にまとい、鼓を打ち、語りをこなす。
こちらは快にして絵。

鼓、太鼓に加えヴォーカリーズとしても高い評価を受けている。
澄んだ高音の声が舞台をひきしめる。
新鮮。
彼女の印象に、もう一彩が加わった。

石井千鶴さん。
無色にして多彩。
不思議なミュージシャンである。


★石井千鶴HP[直感センサ]

≪ライブスケジュール≫
・6月30日(土)19:00〜21:00 新宿 喫茶茶会記
坂田明サロン
ゲスト:石井千鶴(小鼓、締太鼓 など)


[和楽器オーケストラあいおい]
・7月7日(土) 14:00〜 周南市文化会館
Music in Museum by 出光 周南公演

・7月12日(木)京都、13日(金)西脇、14日(土)西脇、15日(日)橋本
西日本ツアー2012夏
【プログラム(予定)】
旅人より 日本民謡ラプソディ 上田麻衣子編曲
オリエンタル・ウィンド(TVCM「伊右衛門」のテーマ曲 HANA-BI(北野武映画「HANA-BI」のテーマ曲) 新曲 題未定 三宅一徳作曲ほか

[秘宝感ライブ]
・7月8日(日)14:30〜 新宿ピットイン 昼 
「昼ピで昼ビ」

・7月26(木)19:00〜 渋谷 ラママ
「日本で一番熱い夏」

秘宝感/Y.S.B(ゲスト 美歌)/カンタス村田とサンバマシーンズ

・7月29日(日)隠岐の島
高橋竹山さんとVOICE SPACE

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2012年06月06日

事も無げ ─ジャズピアニスト 大橋祐子さん

ジャズピアニスト 大橋祐子さん。

ohashiyukoプロフ.jpg

まずはプロフィールを。

子どものころからクラシックピアノ、エレクトーンを。
学校卒業後、ジャズに目覚める。
JAZZピアノを稲盛康利、寺下誠、小嶋貴文の各氏に学ぶ。
2005年NewYork、2006年Swedenを訪れセッションに参加。
現在、自身のtrioを中心に、多数のセッションやサポートに参加、JAZZ、POPS、FUNK等ジャンルにとらわれない演奏活動を行っている。
2009年、CSテレ朝「源流JAZZ」に、リーダーを努める女子バンド<4℃>が取り上げられる。
2010年、CD「Prelude to a KISS」、2012年、セカンドCD「BUENOS AIRES 1952」をリリース。


少し構える。
ちょっと飾る。
自分をよく見せたい。

だれもがそうだろう。

この人は違う。
一切の飾りを捨てた素の<大橋祐子>がそこにいる。
心身ともに<ノーメイク>。

初めてみたとき、そんな印象を受けた。
それは、今でも変わらない。

<ハダカのオオハシユウコ>がいきなり目の前に現れたような、不思議な存在感があった。
目をそらすことができない強さをともなった奇妙な感覚だった。

・・・飾らない自然体が聴く人に好感をもたれている

2枚のCDをプロデュースした老舗ジャズ喫茶<MEG>のオーナー寺島靖国さんが言っていた。

・・・いま、一番やりたい音楽はJAZZ

と、きっぱり。
自身の立ち位置はしっかりと決まっている。

その上で、さまざまなジャンルに挑戦する。
大切にしているのは、歌心のあるメロディー。
だからだろう。この人の演奏はいつも楽しい。
ケラケラ笑ったりキャーキャー騒いだりするわけではないが、とても楽しい。

<リーダートリオ>(大橋祐子p/佐藤忍b/守新治ds)でも。
<4℃>(大橋祐子p/守谷美由貴as/深沢春奈fl/川口弥夏ds/吉木稔b)でも。
<Peach Drops>(大橋祐子p/宮脇裕子tp/江川綾b/佐藤ことみds)でも。
客演の<MyaaM>(守谷美由貴as/宮脇裕子tp/高澤綾tp/江川綾b/大橋祐子p)でも。

いつでもどこでも、この人の演奏は、楽しい。

そして、もう一つ特筆すべきは。
何ごとをなすにも。

事も無げ。


力まない。
肩肘張らない。
いつもリラックス。
開放感にあふれている。

とてつもない大きなキャパシティーを隠し持っている人。なんだろう。

不思議なピアニスト。
大橋祐子さん。

アルトサックスの守谷美由貴さんに誘われ下北沢・Geki地下Libertyで行われる劇団<かもねぎショット>公演に出演する。
6月7日から11日まで、昼夜8舞台。

ジャズと芝居のコラボレーションで、何が飛び出してくるのだろうか。

大橋さんのことだ。
ここでも、気張らず楽しく、そして。

事も無げ

に、楽しい舞台を見せてくれることだろう。


♪「Someday my plince will come」視聴できます

3/21 Release 「BUENOS AIRES 1952」
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★大橋祐子Official Web Site

≪ライブ≫
・6月14日(木)吉祥寺 メグ 
(P)大橋祐子(B)佐藤忍(D)守新治 Start 19:30〜 3セット      

・6月21日(木) 池袋 INDEPENDENCE  
(P)大橋祐子(B)カイドーユタカ(D)秋葉正樹 1st 8:30pm〜 2nd 10:00pm〜

・7月21日(土)関内 ADLIB 
(P)大橋祐子(B)カイドーユタカ(Dr)秋葉正樹 Start 19:30〜

・7月26日(木)吉祥寺 メグ 
(P)大橋祐子(B)佐藤忍(D)守新治 Start 19:30〜 3セット 

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2012年05月10日

鍵言葉は<客> ドラマー 橋本学さん

ドラマー橋本学さんのブログ「自由帳」での発言が、ちょっとした話題になっている。
3月2日にアップされた「終演時間についての提案」。
多くの人にライブにきてもらうための方策の一つとして、終演時間を早めてはどうかというものである。
内容を説明する前に、まずは橋本さんのご紹介を。

いまさら紹介というのも失礼にあたるのではないかというくらい、すでにしてよく知られたミュージシャンです。
7、8年前、ライブの面白さに魅せられライブの徘徊を始めたころ、スケジュールを確認するとき、いつも目にする名前が<橋本学>だった。
演奏を一度も聴いていないときから、その名前はぼくの脳ミソにしっかりとインプットされていた。

その後、太田朱美さんの<Risk Factor>や織原良次さんの<色彩感覚>や、そのほかのいくつかのバンドで橋本さんを聴いた。
マグニチュード9の地震に揺さぶられても、高さ10メートル超の津波が襲いかかってきてもびくともしない安定感に、「すごいなあ」と感心していた。
頼れる兄貴分として、若いミュージシャンからの信頼感も絶大とお見受けしている。

残念ながらリーダーバンドでの演奏をまだ聴いていない。
いずれ機会はある。
楽しみにしています。

そんな 橋本学さん です。

橋本学.jpg

1976年2月28日 兵庫県生まれ。
幼少時よりバイオリンを、中学の吹奏楽部でドラム・パーカッションを始める。
横浜国立大学入学後、モダンジャズ研究会でジャズ・フュージョン活動を開始。
卒業後、インディーズバンド「GANA LOU」「STAY」を経てジャズ活動へ。

2000年、横浜ジャズプロムナード・コンペティション<洗足学園賞>(平田崇トリオ)、浅草ジャズコンテスト<金賞>(西本康朗カルテット)。
2001年、横浜ジャズプロムナード・コンペティション<グランプリ>(西本康朗カルテット)受賞。

2005年、自身のプロジェクト「橋本学trio」をスタート。作・編曲を手がける。
2006年、同郷同年代のドラマー山北弘一と「橋本=山北duo」。
現在、都内・近郊を中心に、多数のバンドでライブ活動、ツアー、レコーディングを行っている。


以下、橋本さんの終演時間についての提案です。

昨今のライブハウスは、いつも客であふれかえっているという状況では、残念ながらない。

理由はいろいろ考えられる。

そこで演奏される音楽そのものに魅力がないのか。
客は少なくて当たり前と、店もミュージシャンもはなっからあきらめてしまっているのか。

ミュージシャン自身が考えなければならないそんな問題があるとしながら、客足を遠のかせる原因として、終演時間の遅さもあるのではないか。
そう橋本さんは言う。

ほとんどのライブハウスでは、演奏は8時にスタートし、30分の休憩をはさんで2セットで行われる。
終演は10時半となる。
予定では。

このとおりに進行すれば、終電など気にせず最後までライブを楽しめる。
だが、実際は、終演が11時を回ってしまう。11時半を過ぎてしまうこともめずらしくない。
なぜか。

スタートが遅い。
進行がルーズで、予定通りに始まらないためなのだ。
15分でもいい。スタートを早めにするか、もしくは予定通りに始めれば、10時半には終わる。

遠方から聴きにくる人もある。
明日の仕事を気にしながら聴いてる人もいる。
そのためにも、予定通りの進行を守ろうではないか。
それが集客にもつながる(かもしれない)というのが橋本さんの提案である。
たしかに、ぼくのように千葉に住むものにとって、終電ってのはけっこう悩ましい問題なのだ。

終演時間を早めればすぐに客が増える、とはならないだろう。
店の売り上げの問題もある。
しかし、集客のためになにができるか、を考える。
そのことにこそ大きな意義がある、と橋本さんは言いたかったのではないか。

この提案は、店の経営とかかわる問題でもある。
勇気ある発言?
でもないのかな。
確たるポジションにいる橋本さんだから言えることでしょう。
ある若いミュージシャンがそう言っていた。

しかし、繰り返すが、集客のために何ができるか
このことをみんなで考える、そのことにこそ大きな意味がある。
橋本さんの勇気ある?提言に100%賛成です。

どんな表現方法だろうが、送り手と受け取り手がいなければ意味がない。成立しない。
無人の月世界で演奏するミュージシャンはいないだろう。(いるかな?)
大勢の客を前にして演奏する。
ミュージシャンの悦びではないだろうか。

鍵言葉は <客>


蛇足ながら、以前このコラムでも書いたお店とミュージシャンに対するぼくなりの提案を箇条書きで。

・スタート時間を早める
・時間厳守
・セットの演奏時間をもっと短く(もう少し聴きたいという後引き状態がいいし、
 二時間、緊張を持続するのはけっこうきつい)
・セットを分けず、1セット1時間半くらいにしては
・セットリストを配る(ごく簡単なものでもいい)
・身だしなみに少しの配慮を(男性ミュージシャンに、ときにむさくるしい人が
 いたりして)
・客も楽しませてくれ(ジャズは聴くより演るほうが面白い? 自分たちだけで
 楽しまずにリスナーも楽しませてほしい)


★橋本学ホームページ

≪ライブ情報≫
・6月20日(水) 外苑前 Z・imagine 19:45〜
橋本学solo live(ds,per,programing,etc)



posted by 松ぼっくり at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | ミュージシャン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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