2012年10月16日

ちょっと不機嫌 ─ジャズ・ドラマー横山和明さん

ジャズ・ドラマー、横山和明さんです。

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1985年3月生まれ。
静岡県静岡市出身。

両親の影響で幼少のころから音楽に親しみ、ドラムを始める。
中学生のころから地元で演奏活動を始め、吉田桂一、吉岡秀晃、松島啓之、荒巻茂生、富樫雅彦など、多くのミュージシャンと共演を重ねる。

高校卒業後上京。
現在は、都内のライブハウスを中心に演奏活動を行っている。

2002年より、渡辺貞夫のツアーに参加。
Junior Mance、Barry Harrisなどと共演。

2012年8月、アメリカ<サンノゼ・ジャズフェスティヴァル>に宮之上貴昭(g)グループの一員として出演。好評を博す。

いつも何かに怒っている。
感情を表に出さず、わずかな不機嫌さを漂わせた表情でドラムを叩いている。

柏の<NARDIS>でも、吉祥寺の<SOMETIME>でも、沼袋の<オルガンJAZZ倶楽部>でも、この人はいつも何かに怒っているように見えた。

<不機嫌なジャズ・ドラマー>

いつもそう思いながらながら聴いていた。
それが、逆にこの人を強く印象付けていた。

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不機嫌さが魅力。
不思議なキャラクターのミュージシャンがいるものだ。

今から半世紀ほどむかしの1950年、60年代は、世界中の若者たちが怒っていた、そんな時代だった。

50年代、イギリスでは、<怒れる若者たち>が文学を中心に大きな社会的ムーブメントをまきおこした。
アラン・シリトーは「長距離走者の孤独」や「土曜の夜と日曜の朝」を書き、不当な社会的差別に抗議の声をあげた。

同じ時代、アメリカでもカウンターカルチャーの大きな渦が国中を吹き荒れる。
この渦は、国境を超え、世界中へ広がっていった。
ビート・ゼネレーションを代表するジャック・ケルアックは「路上」を書き、ヒッピーの圧倒的な支持を受け、映画「イージーライダー」は世界的なヒットとなった。

ジャズもまた、それまでのシート・ミュージックに飽き足りない黒人ミュージシャンを中心に新しいスタイルを目指す試みが、ニューヨークで生まれてくる。
ビバップがやがてハードバップへと進化し、またクール・ジャズやモードなどが登場し、モダンジャズへの道がひろがっていった。

40万人を集めた69年の<ウッドストック・フェスティバル>は、人間性回復のための集会と位置づけられ、この時代の流れの集大成となる。

<怒り>が社会的・文化的ムーブメントの大きな原動力になっていた。

今の若者は、あまり怒らない。
いやそうでもないか。

アメリカでは貧富の格差拡大に抗議する<99%デモ>が、ワシントンから始まり、地方都市へとひろがっている。
<アラブの春>は、いくつかの国の政体を変えた。
ロシアでは、反プーチン・デモが行われ、中国では、残念ながら反日デモが荒れ狂う。

日本の若者は、総じておとなしい。
草食系男子がもてはやされる。

怒らない。
かわりによくキレル。

いつも何かに対して怒っているような横山さんは、だから、よく目立つ。
いったい、何に対して怒っているのだろうか。

沼袋では、蝶ネクタイ姿を披露してくれた。
ライブハウスで見た初めての蝶ネクタイだった。
道具立ての大きな顔。
もみ上げを長めにのばし、気が強そうな一重まぶたの下から強い目が光っていた。
蝶ネクタイは、<憂鬱なダンディズム>を漂わせる横山さんによく似合うファッションだった。

寡黙で、静かでいて、その存在が常に周囲に微妙な圧力波を発信し続けている。
見るたびに「気になる度」が上がっていく。

怒ってなんかいませんよ。
不機嫌なんかではありませんよ。


ご本人はそうおっしゃる。

実際は、暖かな、心優しい人なのかもしれない。

どちらがほんとの<横山和明>なのか、ぼくらにはわからない。
わからないが、ライブを聴きながらそんなことを想像させてくれるミュージシャンなんて、ほかにいない。

いつまでも、不機嫌な<怒れる若者>であってほしいと、勝手ながら熱望している。

横山さんのジャズ観を紹介するのを忘れるところだった。


今ジャズに何か新しい流れがありますか?
・・・新しい流れや現代的な解釈、表現というのは常にあり、音楽もプレイヤーも進化し続けています。
日本では、このところ20-30代の力のある素晴らしいプレイヤーが急激に増え、今、非常に面白くなってきています。
コンテンポラリーな要素が強い人が多いですが、トラディショナルなものに対するリスペクトや愛をしっかり持った上で現代的な表現をしている人が多い。
みんな素晴らしいです。


ジャズの魅力は?
・・・言葉にするのは難しい。
ぼくにとってあまりに身近な存在なので考えたこともない。
何故好きなのかよくわからない。
おいしいものを食べると理屈抜きに感動しますよね。あれと同じ。
構えて難しく考えがちですが、もっと感覚的に摑もうとしなければよくわからないものかもしれません。


目指している方向は?
・・・もっと広く優しく美しい世界を知りたい、もっと大きなグルーヴで包み込んでみんなを踊らせたい。


ぼくのありきたりな質問にも、手抜きせず懇切丁寧に答えてくれた。

前向きで、誠実、正直で、情熱的な人。

<横山和明>は、そんな人だった。のかもしれない。

☆横山和明のblog
※10月のライブスケジュールはこちら
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2012年08月28日

Dream Jazz Band

8月12日
世田谷パブリックシアター
日野皓正 presents “Jazz for Kids”

このコラム3回目の登場です。
またかよ、と思われる向きもあろうかとは思うが、これって何回でもレポートしたくなるイベント。
不思議な吸引力をもったコンサート。
なぜか。
後を引く。

オリンピック中、濫発され、いささか色褪せた感なきにしもあらずの<勇気と感動>という言葉に、ここで新たな命が吹き込まれている。
そんな現場に居合わせているという実感が、聴衆の心を揺さぶり続ける。
心のそこから湧き上がる感動があり、勇気を与えてくれる。
これぞ<勇気と感動>だ。

すごいバンドがあるもんだ。

バンド名はDream Jazz Band、略して<ドリバン>。

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@フィナーレは、ドリバンに卒業生、講師陣も加わって全員集合の演奏となる。
ドリバンの演奏には教師陣や卒業生は入らない。

メンバーは、すべて世田谷区立中学校の生徒たち。
総勢50人。
4月から練習を始め、演奏会の行われる8月までに立派なジャズ・ミュージシャンになっている。
なかには、初めて楽器を手にする子どもだっている。

わずか4ヵ月で、こんなに上達してしまうのか。

驚異。
奇跡と言ってもよさそうだ。

子どもたちを指導した教師陣がすごい。
日本のトップ・ミュージシャンが勢ぞろいだ。

日野皓正校長tp/西尾健一tp/多田誠司as/守谷美由貴as/片岡雄三tb/後藤篤tb/荻原亮g/小山道之g/石井彰pf/出口誠pf/金澤英明b/田中徳崇ds/力武誠ds/グレース・マーヤvo/ほか

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Aドリバン演奏の前の<前座>をつとめた講師陣の演奏。
トップクラスの」ミュージシャンたちによる演奏は、鳥肌が立つほどの凄さ・・・。

講師陣の指導のせいもあるだろう。
しかし、実際に演奏するのは中学生たち。
講師は、手助けなんかしてくれない。
子どもたちだけで、早いのもスローなバラードも、かわりばんこに立つソロだって、立派にこなしている。

短期間でこんなに腕を上げてしまう子どもたちの、吸収力と咀嚼力、表現力にただただ圧倒される。

ジャズは難しい、と言われる。

新しさを追求し、変化にチャレンジする即興演奏は、特にそうだ。
ミュージシャンにとっては、だからこそ面白いということにもなるのだろう。
演奏することが面白く、面白すぎて、つい、聴衆のことなど忘れてしまう。

だが、そこで行われていることを、聴くものはなかなか理解できない。
もっとこっちを向いてよと思いながら聴いている聴衆が、ジャズが難しいと感じる一つの理由ではないかと、いつも思っている。
内向きにならざるを得ないのがジャズの宿命なのだ、と、なかば諦めながらいつも聴いている。

<ドリバン>の演奏は、そんな内向きのベクトルをいとも簡単に外向きに変えてしまっている。
舞台、客席をひとつの音楽空間に変える力を持っている。
たくまずして、ジャズの楽しさを聴くものにアピールしてくれている。

ジャズは楽しい。

のだ。

家族や友人など関係者もたくさん聴きにきているのだろう。
泣きながら聴いている人があちこちにいる。

こんなシーンもあった。
女の子が、トロンボーンでまるまる1曲ソロを吹く。

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B1曲通してソロをとった中岡さん。

最初、日野校長から、「そんな音じゃダメだ」とソロを認めてもらえなかった女の子。
「どうしてもやりたい」と、がんばってがんばって実現したソロ演奏だった。

彼女、無事吹き終わって号泣していた。
自分のからだよりも大きいトロンボーンにつかまり、しゃがみ込んで泣いていた。
日野さんも、うれしそうだったなあ。

この日、一番盛り上がった場面だったかもしれない。

ジャズは、泣ける。

ものでもある。のだ。

終演後、ステージには大仕事を見事にやり終えた達成感にあふれた子どもたちの表情が勢ぞろいしていた。

こんなに早い時期に、かくも大きな達成感を手に入れてしまって大丈夫かなあ。
そんな危惧が、ちらっと頭をよぎる。
つまらぬ取り越し苦労であればいいが。

なにはともあれ、来年もまた聴きにきたい。

ジャズは、美しい。
ジャズは、楽しい。
ジャズは、泣ける。

そんなことを教えてくれた、

<ドリバン>だった。

jazzforkids.JPG
C終演後の終了式。全員大満足。いい表情がそろった。

この日、TV局二社が密着取材に入っていた。
放送日はまだ未定。
興味のあるかたは、世田谷パブリックシアターのホームページをこまめにチェック。
http://setagaya-pt.jp/

写真@〜C
撮影:牧野智晃
提供:世田谷パブリックシアター
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2012年07月31日

世界をハグする ─ピアニスト、菊池太光さん

一見して(一聴してかな)、これはすごいなと思わされる人に出会うことがある。
そんな一人に、今評判のピアニスト菊池太光さんがいる。

菊池太光.jpg


一昨年、<PITINN>で初めて聴き、「おっ、こんなピニストがいたのか」という強い印象を受け驚かされた記憶がある。
以来、7回ほど彼のライブを聴いてきた。

どんなユニットとの演奏でも、最初の「おっ、・・・」という印象は変わらず、むしろ回を重ねるごとにその感じは強まっている。
ぼくのバカな耳でさえそう感じるのだから、これはやはり相当なもんだろうと思っていたが、あちこちから聞こえてくるミュージシャン仲間や耳の肥えたフアンの菊池評もおおむねそんなところで、ぼくの最初の印象が間違いではなかったことを証明してくれている。

演奏が上手い。
早い。
正確である。
表現力に富んでいる。

おおかたの菊池評である。

天衣無縫。
いつも明るくニコニコしている。
元気。
よくしゃべる。
意外に(失礼)礼儀正しい。
ピアノを弾いているのが楽しくてしかたがない。
楽しさに対する欲求が並外れて強い。

ぼくの印象である。(外見的だな。音楽とはまるで関係ない。なさけない)

<菊池太光>とはどんなミュージシャンなのだろうか。

HPには、プロフィールがない。
いくつかの質問を送ったが、回答してくれたのはプロフィールだけだった。

・・・1985年5月29日生まれ。
幼少よりクラシックピアノを習い始める。高校時代、オスカー・ピーターソンのCDを聴きジャズに傾倒。卒業後ジャズピアニストを志す。
現在、岡崎好朗カルテット、中村健吾トリオ、ピアノトリオGなどで、都内を中心に活動中。

これだけ。
まっ、いっか。
あとは勝手に想像してみるのも楽しいかもしれない。

この世界に飛び込むきっかけとなったというジャズ・ピアニスト、オスカー・ピーターソンを聴くと何かわかるかな。
家に一枚だけあった「NIGHT TRAIN」を聴いてみた。

堂々として迷いがない。
これぞジャズ、といった揺るぎない自信にあふれている。
ジャズのメインストリームを悠々と闊歩している。
少しばかり立派すぎるような気がしなくもない。

しっぽの先までエネルギーが満ち溢れている
とにかく元気な人
通りいっぺんの教養主義を寄せつけない心愉しい気迫に満ちている
「ただただスイングする」という一点にかけたまっすぐな情熱
(最後の四つは、村上春樹さんのピーターソン評{ポートレイト・イン・ジャズ}より。参考までに)

菊池さんは、この黒人ピアニストのどこに惹かれたのだろうか。

人が人に惹かれるわけなんて、そう簡単にわかるわけがない。
したがって、<菊池太光>とはどういうピアニストなのか、なんてそう簡単にわかるわけがない。
・・・わかるわけないだろう
ご本人だってきっとそう言うにちがいない。

ただ、こうとだけは言えそうだなと思えることがある。

この人はピアノを弾いているのが愉しくてしかたがない。のだ。
その愉しさを希求する欲望が並外れて強い。のだ。
その強烈な欲望から照射される目に見えない光線が、周囲の人たちの心と感応し、人々を楽しませ、ウキウキと心躍らせ、スイングさせる。のだ。

彼の発する摩訶不思議なエネルギーを、ぼくは勝手に<ハグ光線>と呼んでいる。

ハグ光線に照射され、聴く人は知らず知らずのうちに<菊池太光>のとりこになってしまう。

愉しくてこそジャズ。
美しくてこそジャズ。

一度ハグ光線にあたると、素直にそう感じられるようになる。

ハグするピアニスト菊池太光さんは、そんなミュージシャンなのです。


★菊池太光のスケジュール(FC2ブログ)



posted by 松ぼっくり at 00:00 | Comment(3) | TrackBack(0) | ミュージシャン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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