2013年12月18日

2014へスイングバイ ─ジャズシンガー 紗理さん

ジャズシンガー、紗理さんです。

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父親が、ジャズサックスの名プレイヤー中村誠一さん。
5歳からダイアナ石山Song&Danceミュージカル教室でダンスとミュージカルナンバーを学ぶ。
高校2年の時、エラ、フィッツジェラルドの歌に衝撃を受け、ジャズヴォーカリストを目指すようになる。
2008年、洗足学園音楽大学ジャズヴォーカル科を首席で卒業。
同年7月渡米、Berklee College of Musicに入学。NYでライブ活動なども始める。
2010年帰国。
現在、ジャズシンガーとしてソロ活動をする傍らジャズコーラス・ユニット<Chai‐Chii Sisters>でも活躍中。
2013年10月、デヴューアルバム「The Sweetest Sounds」をリリース。
同年11月、Thelonious Monk Institute of Jazzサポートのヴォーカルコンペティション<Osaka Asian Dreams Jazz Competition 2013>で優勝。

その他の活動歴。
カンヌ国際映画祭出展作品「ヤーチャイカ」主題歌(2008年)。
「味の素ギフト」「タイヤ館」「三ツ矢サイダー」CM、CMナレーション。
第30回浅草JAZZコンテスト銀賞(2010年)。
ディズニーオンアイス2011で、「アラジン」ジャズミン役、「美女と野獣」ベル役の日本語吹き替え歌を担当、などなど。



また一つ、新しい<星>に遭遇した。

彼女のライブを初めて聴いたとき、そんな印象を受けた。
それは、とても気持ちの良い衝撃だった。

伸びやかな歌声が、ストレートに聴くものに届いてくる。

ありがちな、ただ表面を飾るだけの大仰なジェスチャーもなく、わざとらしさだけが目立つテクニックに墜ちることもない。

歌にこめられたメッセージを、聴いてる人にきちんと届けたいという思いで歌っている。
そして、届けている。
そう強く感じた。


---ミュージシャンは「うまいねえ」と言われるよりは、「いいねえ」と言われるほうがはるかに嬉しい。(中村誠一『サックス吹きに語らせろ』以下同)

---芸術はたどたどしいのがいい。


ライブで買い求めてきたCD「The Sweetest Sounds」を聴き、改めてその思いを強くした。

美人である。見たとおりの。

血筋もいい。歌には関係ないかもしれないが。

たどたどしくもない。父君のお言葉ではあるが。

そして、とても、いい。

感心したのは、あまり音響環境のよくないライブハウスで、歌も聴かずに酒を飲み、大声でしゃべりまくっている酔客に、嫌な顔一つ見せず、何事もないかのごとく平然と歌う、その立ち居振る舞いのよさだ。


---音楽の味方、それは第一にお客さん、聴衆。


ちゃんと心得ている。
こんな人、そうはいないぞ。

かのビル・エヴァンスも、演奏中に客のたてるナイフやフォークの音に、露骨に嫌な顔をした、というエピソードがある。

<星>にとっての必要不可欠かつ十分な条件を備えている、と思いました。

この秋、アイソン彗星が話題になった。

太陽に最接近した時、核から噴出する尾が金星や満月よりも明るく輝く、という話だった。

光り輝く巨大なダストテイル(尾)をなびかせながら、太陽引力によりスイングバイするはずだった。

残念ながら、直径5kmほどという小さな核は、太陽の熱と引力に耐えられずバラバラに崩壊し、世紀の大天文ショーは見られずじまいになってしまった。

<星>が輝き続けていくためには、核自体が大きくなくてはならない。

紗理さんは、ジャズシンガーの巨大な<星>エラ・フィッツジェラルドが大好きと言う。

・・・彼女の歌を聴いていると、ジャズがたまらなく好きなんだなぁという気持ちが伝わってきて、とってもHAPPYになるんです。

大きな核を持ち。
太陽の重力にも耐え、その引力を利用してフライバイし、いつまでも飛翔し続け。
聴く人を楽しませ、和ませ、驚かせ、泣かせ、慰める。

そんな<星>になって欲しい。
なりつつある予感。

楽しみなジャズシンガー<紗理>さんです。

最後に、お父上の言葉をもうひとつ。

---音楽が人々に愛される秘密は、いい音楽、心地よいサウンド、感銘をうける音楽、元気が出る音楽を届けているから。



☆紗理Official Blog
紗理Twitter(@SariSwing) 紗理facebook page

音楽 『The Sweetest Sounds』こちらで視聴できます!
http://diskunion.net/jazz/ct/detail/JZ130815-09

≪Pick Up LIVE Info≫
・12/19(Thu.)18:30〜
中村誠一みなとX'masジャズコンサート@六本木 麻布区民センターホール
¥4.000
【MEMBER】Golden Triangle Torio:吉岡秀晃p/井上智gt中村誠一ts
ジャズブラスバンドStompers:中村誠一ts.cl/石川広行tp/前田真梨子tb/石垣陽菜b/彦坂玄ds/赤須翔Banjo
Chai-Chii Sisters: 紗理&優日vo

・12/24(Tue.)20:30〜21:00 @渋谷 タワーレコード1階(無料)
【MEMBER】紗理vo/瀬田創太pf/橋本歩cello

・1/15(Wed.)
晶子&紗理@六本木 All Of Me Club

・1/21(Tue.)
Salon de Musique@渋谷 バールローズ

↓more info
http://yaplog.jp/biku_sari/category_6/


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2013年09月12日

二つの島 ─サックス奏者/ヴォーカリスト/作曲家、徳田雄一郎さん

サックス奏者/ヴォーカリスト/作曲家、徳田雄一郎さんです。

Yuichiro Tokuda.jpg

1981年3月生まれ。千葉市出身。
2003年、バークリー音楽院卒業。
在米中、ボストン近郊のバー、クラブ等で演奏活動を行う。
2004年より、活動拠点を日本へ。
2006年、インディーズ・レーベル「GoodNess Plus Records」を設立。
5枚のアルバムを発表。
2008年1月、第6回千葉市芸術文化新人賞受賞。
同年8月、徳田雄一郎RALYZZ DIGで活動を本格化する。
2011年、マレーシア<BORENO JAZZ FESTIVAL 2011>で海外初公演。
同年5月、International Songwriting Competition 2010(米)にて、優秀賞受賞。
2011年10月、中国第10回記念南京国際ジャズ・フェスティバルへアジアから初めて選出され出演。
などなど、国内外での活躍が注目されている。
現在、「新宿PITINN」を拠点に、世界的に活動の場を広げている。


長いプロフィールになってしまったが、自身のHPのものはこんなもんではない。
A4版5ページにもなろうかという、ミュージシャンのプロフィールとしては、おそらく日本一のものではないかな。
家族歴、活動歴、音楽観などが丁寧に紹介されている。
当方の舌足らずな記事よりは、それをそのままここに載せたほうがいいような気がしなくもない。
興味のある方は、ぜひのぞいて見てください。

「このライブを聴いてください」と、徳田さんから誘われ、8月末、赤坂B-flatへ。

徳田雄一郎RALYZZ DIG最新アルバム<Crossing Colors>の発売記念ライブ。

メンバーがすごい。

徳田雄一郎as、ss、voc/鈴木直人g/田村和大p/中林薫平b/長谷川ガクds/

RALYZZDIG.jpg
RALYZZDIG(左から、田村和大、鈴木直人、中林薫平、長谷川ガク、中央・徳田雄一郎)

気鋭の若手ジャズ・ミュージシャンばかりで編成されたクインテット。
どんなジャズを聴かせてくれるのか、すこしわくわくしながら、クラブの扉を開けた。

あれっ、間違えたかな?!

聴こえてきたのは、レラ抜き音階の、あの独特の沖縄メロディーであり、舞台では、誰かが「てぃんさぐぬ花」を唄っている。

沖縄民謡の発表会に来てしまったか。

店の人に確認すると、間違いではなかった。
歌っているのは徳田さん。
彼のライブには、歌がつきものなのだとか。

両親の家系が、鹿児島県沖永良部島の血筋をひいている、と略歴にあった。
父方は舞踊系、母方は音楽系で、子供のころから祖父の奏でる三線にあわせ、皆で沖永良部民謡を歌っていた。

それにしても、ジャズと沖縄民謡を一緒にやるか。
そんな思いが一瞬頭をよぎったが、考えてみれば別になんの不思議もないことにすぐ気がついた。

沖縄や沖永良部の古謡が、少しずつ変容しながら唄い続けられ、今に生きている。
ジャズも、奴隷としてアメリカに連れてこられた黒人たちが、日常的に歌ってきた労働歌やゴスペルソングが西洋音楽と合体し出来上がったもの、それが形を変えながら今にいたっている。

海に浮かぶ二つの島、という話がある。

潮がひき、水面がさがると、その二つの島は陸続きになる。
別々だと思っていたものがどこかでつながっている。
そんな例えでよく使われる言葉だ。

人は、日々の生活の中で感じる喜び悲しみや、人を思うこころ、別れのつらさなどを、ふと口に出して歌う。
それは、時代や人種、国籍を超えた、人間に共通した自然な感情表現である。

ジャズと沖縄民謡。
この二つは、そんな不変の人間感情の上に立っている二つの島であり、水面下でしっかりとつながっているものだった。

だからこそ、会場をうめた超満員の人たちも、この<二つの島>をなんの違和感もなく受け入れ、楽しんでいた。
もちろん、ぼくも。

---日本人が持っているメロディーの豊かさを大事に、聴く人の心に届くジャズを創っていきたい

と徳田さんは言う。

ぼくには、沖永良部とニューヨークに両足をかけ、地球をひとまたぎして世界を見据えている、
そんな徳田さんの姿が見えるような気がしていた。

日本的なものを大切にし、世界に通用するジャズを創り上げようとしている徳田さんの気宇壮大さが、なんともよい。

積極的に海外公演に出かけていく。
そこで高い評価を受けている。

---現在進行形のジャズの、ひとつの最先端
---今、ここまで包括的なジャズを聴かせるバンドは世界のどこにもない
---独特な音色の特異奏法による強力な熱気


真っ直ぐ前を見つめて走り続ける<徳田雄一郎>に、まずは拍手を。


☆徳田雄一郎オフィシャルウェブサイト

"Nothing There"


"海時風色〜てぃんさぐぬ花 in India"



≪LIVE INFO≫
・10月12日(土)
徳田雄一郎RALYZZ DIG @ 横浜 Jazz Promenade 2013
http://jazzpro.jp/
※日本最大級のジャズ・フェス【横浜ジャズプロムナード】 
NHK-FM横浜放送局 公開生放送! (出演時刻:15:00~15:50)


・10月20日(日)習志野文化ホール
ならしの茜音のまちのコンサート
http://www.narashinoafa.com/report.html

・12月15日(日)千葉市若葉文化ホール
徳田雄一郎レリーズディグ - クリスマスジャズコンサート


↓詳細その他ライブ情報はこちらでご確認ください。
http://www.yuichirotokuda.com/pc.html#schedule


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2013年05月27日

普通ではない普通 ─ベーシスト大塚義将さん

ベーシスト大塚義将さん。

1986年、群馬県出身。
13歳でギターを、高校入学時よりベースを始める。
専修大学へ進学、ビッグバンド・サークルへ入部。
ベーシスト、Ray Brownの演奏に感銘を受け、その演奏を手本に独学でベースを学ぶ。
2年次、同大学コンボジャズ・サークル「MJAブルーコーラル」へ入部。
サークルの先輩、奥川一臣p、紺野智之ds氏らからジャズのハーモニー、アンサンブルにおけるベースの役割など、本格的に音楽の指導を受ける。
このときの経験が、現在の演奏スタイルや音楽観に大きな影響を与えており、今なお重要な指針となっている。
現在、自身のトリオを中心に、都内や横浜で演奏活動を行っている。

大塚義将70.jpg


2年前、東中野・セロニアスで初めて大塚さんを聴いた。
サックスの纐纈雅代さんやギターの井上銘さんらと一緒だった。

<スタンダード>がいる!!

が、その時の印象。
何の脈絡もなく、そんな言葉が頭に浮かんでいた。

何故かはわからない。
それに、<スタンダード>って何なんだ。

英和辞典を引くと、こんな訳語が載っていた。

<standard>
1.(比較・判断のための)基準、尺度、手本、見本、水準、標準、規格
2.(度量衡の)原基、原器
3.本位(制)、(金貨・銀貨の)規定純度
4.スタンダード・ナンバー、標準演奏曲目、人気曲目
5.旗
6.普及品、人気商品
7.まっすぐな水道管、立ち木

なるほど、そういう意味だったのか。

すると、大塚さんって、

比較・判断のための基準や尺度になる人?
ジャズの原基?
旗?
普及品・人気商品?
まっすぐな立ち木のような人?

すべての訳語に当てはまりそうでもあるし、すべて違うようでもある。
一体全体、ぼくは、大塚さんの<どこに>スタンダードを感じたのだろうか。

いつも、キチンと背広を着てネクタイを着用している、というイメージがある。
ミュージシャンらしからぬミュージシャン。
大手企業のサラリーマンや銀行員といわれてもなんの違和感もない。
普通の人。

演奏でも決して大見得を切らない。
アトラクティブな動きで人目を引くこともない。

動かず、変わらず、奇をてらわない。
常にどっしりとして、堅実、揺るぎがない。

正統派の落ち着きをいつも漂わせている。

そうか、スタンダードには、正統の意味もあるのか。

---ジャズの魅力は、正解がないこと。その分、ミュージシャンの個性が顕著に出る音楽です

だからこそ、

---ぼくは、共演者の魅力を引き立たせることのできるベーシストを目標にしています

考え方も実に堅実だ。

一見地味そうでいて、いつもそこにいる、いつもそこにいないと場が成り立たない。
堅実であるがゆえの、存在感をお持ちでもある。

スタンダードには、堅実の意味もあったのか。

作家の村上春樹さんは、「僕はものが書けるだけの普通の人間」と自身のことを言う。

大塚さんも、「ぼくは、ベースが弾けるだけの普通の人間だよ」と考えているのかもしれない。

普通を装った普通ならざるもののすごさ、奥の深さを持っている。

スタンダードには、普通という意味もあるようだ。

普通を馬鹿にしてはいけない。
普通は平凡とは違う。

平凡は消え去り、普通が、堅実が、正統が残り、残ったものがスタンダードになる。

そんなことを感じさせてくれるベーシスト。

<スタンダード>がついて離れない。
大塚義将さんです。


≪LIVE INFO≫
・7/10(水) 東中野 Thelonious
大塚義将(b)奥川一臣(p)西村匠平(ds)

・8/9(金) 国分寺 kiki
大塚義将(b)奥川一臣(p)西村匠平(ds)

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