
子どものころからギターを習う。
小学校の音楽クラブでサックスを始め、中学の吹奏楽部でとりこになる。
洗足学園短期大学器楽科に進みクラシックサックスを専攻。
卒業後、改めて同校ジャズコースに入学。
現在、都内を中心に演奏活動を行い、ヤマハPMSでサックスを教えている。(HPより)
ごくごく普通のプロフィールです。
でも、なかにこんな1行がある。
・・・お父さんお母さんたくさんお金かけてくれてありがとう。
ん? なんですか? これは?
普通、プロフィールにこんなことは書きません。
どこそこの賞をもらいましたとか、こんなこともできますよとかいった類の、得意話や自慢話をひけらかしたがるのが、まあ、よくあるものです。
苦労をかけた両親への素直な感謝。
そんな気持ちがスッと書けてしまう。
平山さんの人柄なのか。
読む人間の反応を計算して書いているとしたら、それはそれでまたお見事である。
初顔合わせのピアノ・トリオと組んだライブを聴いた。
始めの2曲。
互いの技量を測りあうような、どこかよそよそしい演奏だった。
3曲目から平山さんにドライブがかかり始める。
少しずつ少しずつ、それと気がつかぬほど少しずつ、加速していく。
やがてスーパーチャージャーに火がつきエンジン全開となる。
ベテランぞろいのバック3人は、平山さんのサックスにのせられて、知らず知らずにペースを上げている。
完全燃焼の2時間。
いつもと違う自分がそこにいる。
なんなんだこれは。
3人ともあっけにとられている。
感心したような、あきれたような、なんともいえぬ表情をみせていた。
リーダーの女性ピアニストは、曲が終わると思わず拍手しちゃってた。
ミュージシャンがミュージシャンに拍手するなんて、見たことがない。
彼女、MCで、「どんどん好きになってしまいます」なんて真っ正直な感想まで言っていた。
平山順子さん。
不思議な雰囲気を持ったミュージシャンである。
寡黙を装った雄弁。
静寂なベールに包まれた賑やかさ。
自覚されない矜持。
慎ましやかなおてんば。
なんか、いろいろ言えそうだ。
いろいろ言えそうだが、言葉にするとなにか違う。ウソっぽい。
こうしたもの言いをウソっぽくさせてしまう何かが、平山さんの個性なのだろう。
そんな個性からなる発光現象が、演奏に不思議な彩りを与えている。
平山さんは、一生懸命に吹かない人である。
手抜きをする、いい加減である、不真面目である、ということではもちろんない。
「一生懸命」を表に出さない演奏、とでも言うのだろうか。
早い曲でもスローなバラードでも、それは変わらない。
「どう、いいでしょう」と、うまさをひけらかすことがない。
とてもいい演奏なのに・・・。
それでいて、周りをいつの間にか自分の世界に取り込んでしまう。
大きな包容力を持っているミュージシャン、と言えるのかもしれない。
ライブに足を運んで確かめてみてください。おすすめです。
そういえば。
この人のニックネームは、「じゅんじゅん」だった。
辞書に四つの言葉が出ている。
<循循> おだやかでゆったりしたさま。秩序正しく整然としている。
<恂恂> まめやかなさま。真心があり、おそれ慎むさま。
<諄諄> よくわかるように、繰り返し話して聞かせるさま。まめやかにいそしむ。
<順順> 正道に従うこと。動作、やり方などの順序が正しく適当であること。
誰が名付けたかは知らないが、「名は体を表す」をこれほどみごとに体現したニックネームはそうはない。

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