2010年12月03日

ライブハウスの経済学

人様の懐具合をあれこれセンサクする品の無さを承知のうえでの、
<ライブハウスの経済学>です。

そんな余計なことをなんでする?
わけがないわけではない。
ジャズにとって、ライブハウスがいかに大切なものであるかにちと思いをはせる。
これって、けっこう意味があると思っているからです。

考えてもみてください。
ライブハウスがなくなってしまったら、ジャズの世界のあらかたは消え失せてしまうことになるでしょう。
ライブハウスは、ミュージシャンにとっても、ジャズ・ファンにとっても、とりわけ経営者にとっても、とても大切な<仕組み>なのです。


ライブハウスのオーナーでもある評論家の寺島靖国さんが、某出版社のPR誌でこんなことを書いていました。

 ライブハウスを継続していくうえで大事なことは、

 ・・・趣味に淫しないこと。
 ・・・一日4万円(3万円だったかな)の売り上げをはかること。



店が、賃貸か自前かによっても事情は違うだろうが、一日4万円か。
そんなに難しくなさそうにも思えるが、これがけっこうきついらしい。

東京のライブハウスのミュージック・チャージ(MC)は、3,000円前後が一番多い。
満席20人規模の店(このクラスが多い)で計算すると、いっぱいに入って<3,000円×20人>となり、MCは6万円になる。
ミュージシャンにはその半分(ほど)がいく。
チャージバックというようだ。
店の収入は3万円、飲食代で2万円を売り上げれば、靖国さんのいう採算点はクリアできる。

これなら楽勝。
とは、現実にはなかなかいかない。

第一、いつも満員になるわけじゃない。
満員どころか、少ない入りのほうが多いだろう。
それでも、少ない客がせいぜい飲食に精を出してくれればいいけれど、ガブガブ飲むぼくのような人間はそうはいない。

余談ながら、<聴きながら飲む>のがライブハウスでの正しい過ごし方で、
<飲みながら聴く>のは間違っている。
それはミュージシャンに失礼ってもんでしょうが。
自戒の気持ちをこめて、ちょっと一言。

客を集めるためには、集客力のある大物ミュージシャンを頼めばいいのではないか。
そのとおり。
でも、ビッグネームはチャージバックでは出てくれない。
ギャラじゃなくちゃイヤだよ、なんてことを言ってくる。

ギャラは、トップクラスで2〜3万円前後が相場とか。
たいした額じゃなさそうだが、売り上げ目標5万円規模の店にとっては大ごとだ。
ライブなんかやらずに、飲食商売に徹した方がはるかに割がいい、というオーナーがけっこういたりもする。

ミュージシャンだって大変だろう。
20人分のチャージバック3万円を、トリオならば3で割るわけだから一人1万円ということになる。
もっとも、ほとんどの場合、メンバーへの謝礼はリーダーが面倒をみることになるらしい。
リーダー・ライブをやればやるほどリーダーは貧乏になる、なんて笑えない話もあるほどだ。


経営者にとってもミュージシャンにとっても楽な道ではない。
楽ではないが、ここはひとつ頑張ってもらうしかない。

店は、あしたも、あさっても、そのまたあしたもちゃんとある。
そう願わざるをえない。

午後7時。

日本中のライブハウスに灯りがともる。
カチカチとグラスの触れ合う音が聞こえてくる。
ミュージシャンは、チューニングに余念がない。
もうすぐライブが始まるようだ。

Whom The Gods Love
神々に愛でられし若者たちの<芸能(術)的祝祭>の始まりだ。

さてと、今夜も<神様のおだちん>をもらいに行くとしよう。


(文中の数字は、オーナーやミュージシャンたちに聞いた話から、ぼくが勝手に推測したものです。当たらずも遠からず、くらいに思っていただけるとありがたいです)


 ★ぼくの好きなライブハウスです
 <セロニアス> 東中野 03-3365-0572
 <INDEPENDENCE> 池袋 03-5960-2252   
 <CLIPPER> 千葉みなと 043-239-9240




posted by 松ぼっくり at 11:33 | Comment(4) | TrackBack(0) | コラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Jazzライブハウスの1オーナーです。

> ・・・一日4万円(3万円だったかな)の売り上げをはかること。

東京の都心部だと、これでは成り立たないかと。

例えば、経費を最小限で分解してみても、月額200万は掛かり、30日営業でも7万位は売り上げないと厳しいです。

・家賃25万(坪15坪、坪単価15000円、更新料1ヶ月)
・仕入25万(1日8000円×30日)
・人件費50万(店長+アルバイト1名)
・雑費10万(光熱費、調律費等々)
・出演料90万(3万円×30日)

この他にも、税金等、細かな出費は重なり、また初期投資も回収しないといけないため、15坪程度のお店を最小の投資で運営したとしても、1日8万〜9万の売上は必要かと思います。

Jazzのお店は、お客の回転は基本あり得ないため、逆算すると、客単価5000円として、平均16名〜18名程度のお客がいないと成り立たないということになります。
Posted by オーナー at 2010年12月08日 16:12
コメントありがとうございました。貴重なデータをちょうだいしました。寺島靖国さんのコラムは、1年半ほど前のものですが、現状はさらに厳しくなっているということでしょうか。とても参考になりました。
よろしければこのデータをどこかで使わせていただきたいと思っておりますが。ご検討ください。大好きなジャズが、ミュージシャンにとっても、ライブハウスの経営者にとっても、そしてフアンにとってもいつまでも元気であることを祈っています。
Posted by 松ぼっくり at 2010年12月09日 12:57
数字はご自由にお使い下さい。(ご興味のある数字があれば、分かる範囲で何でも出しますよ)

ただ実感としては、出演料90万のところですが、15坪程度のお店では、月額60万でさえ実際に出しているお店は少ないかと思います。(良いか悪いかは別問題として、ミュージシャンは本当に大変です)

そうしますと、月額200万円の売上があれば、何とかお店は回るというのが現実ですが、休みも週1回取れるかですし、儲かるものではありません。

あと、トップクラスで2〜3万とありますが、トップですと、このような数字ではまず不可能です。いわゆる全国的に知名度のある数少ないジャズミュージシャンですと、15万〜30万は普通に飛んでいきます。
Posted by オーナー at 2010年12月11日 14:29
度々のコメント感謝です。ビッグネームのギャラには驚きました。普通のライブハウスで呼べる額ではないですね。何も知らない一フアンなので、驚くことが多い世界です。今後ともよろしくお願いします。
Posted by 松ぼっくり at 2010年12月14日 16:15
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。