黒板の上の壁に、「なにごともらしく」という標語がかかっていた。
子どもは子供らしく、男(女)は男(女)らしく、日本人は日本人らしく・・・。
逸脱せず、本分をまっとうしなさい、ということか。
同化、協調をよしとする画一主義へのすすめ、だったのか。
一方、「らしく」を自分らしくと解釈すれば、今好みの個性尊重主義とも受けとれる。
考えると、なんか不思議な標語だった。
ピアニストの山田貴子さん。
ジャズ・ピアニスト兼作曲家。
国立音大でクラシック・ピアノを専攻。卒業後、ジャズに転向し、ボストンのバークリー音楽大学へ留学。帰国後、東京、千葉、神奈川を中心に演奏活動を行っている。CDは06年「Deep blue」、10年9月「My story」(予定)がある。
初めてトリオ(山田貴子p/安田幸司b/長谷川ガクds)を聴いたのは、1年ほど前。
市川のホールで行われたコンサートだった。
トリオ全員が千葉出身者とあっては、聴き逃がすわけにはいくまい。
ぼくも千葉の住民です。
「応援に行かなきゃ」みたいな軽い気持ちで聴きにいったが、驚いた。
そんなご当地的贔屓感情なんかを吹っ飛ばす、若々しい情熱と才能を持ったバンドだった。以後、ライブを追いかけるようにして聴いている。
おしとやかなお嬢さん、といった様子の美人だが、どうしてどうして、いろんな顔をお持ちの、一筋縄ではいかない、奥の深いミュージシャン、とお見受けしている。
◆「サマータイム」を5拍子という変拍子で演奏する。
◆叙景的センスが抜群である。ニューヨークに遊びに行ったときに作った「North
Metro」という曲が好きで、テンポの速いこの曲を聴いていると、地下鉄に乗っている
疾走感が味わえる。窓の外を光の帯が流れていくのが見えてくる。
◆「ドナ・リー」を通常の4倍の速さで演奏する。
◆場所によっては手抜きを、もちろん、しない。しないが、PITINNでの即興演奏における
没入ぶりは、鬼神もこれを避く(古いなあ)迫力がある。
こないだそんな話をしたら、「私、手の抜き方知らないんです」。
今度教えてあげましょう。...冗談です。
◆クラシックの演奏会でも演奏をする。
◆しゃべることが苦手とおっしゃるが、MCにはいつも感心している。
ほどよく整理され、過不足なく、それでいて情報量が多い。無駄な笑いがない。
何が面白いのか、一人で笑ってるMCが多い。
笑うのは客である。自分が笑っちゃあいけないよ。
◆犬派である。ぼくは猫派だが反犬派ではない。人間も好きだが動物も好き、というのが
一番いい。こりゃ音楽には関係ないな。
◆興にのると、ピアノを弾きながら鳩を飛ばす。...嘘です。
手品師のようにたくさんの引出しを持っている。
ご本人は「もっと持ちたい」。
なんとも欲張りである。
山田貴子らしさ、とはなにか。どこにあるのか。
山田貴子らしくとは、どういう生き方か。
そんなことを考えながら聴くライブもまた楽しい。
文中、「サマータイム」を変拍子で演奏とか、叙景的センスがあるとか、4倍速で演奏しているとか、よく分かっているような顔をして書いているが、これらはすべて、彼女の話を聞いて理解できたこと。
後付けです。
知ったかぶりをするなよと怒られそうなので、その前にお断りを・・・。
言い訳です。
でもね、音楽的素養などなくてもジャズは十分楽しめます。
ほんとです。
「Sleeping for 7 days」視聴できます
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山田貴子 official Website
《Newアルバム情報》
★山田貴子トリオ2nd album 『My Story』
メンバー:山田貴子(piano)/安田幸司(bass)/長谷川ガク(drums)
amazon / TOWER RECORDS
2010年9月10日(金)【特別先行発売】レコ発ライブ@れすとらん邪夢(千葉)
2010年10月6日(水)【CDショップ、オンラインストアにて全国発売】
☆店頭にない場合はお取り寄せになります。