この両者、そもそも自己繁殖能力に問題があったところへ、強力な外来種が大挙して襲来し、知らぬうちに蔓延していた「ぬるま湯」という環境破壊因子により棲息域が狭められ、いまや再生不能状態に陥っている。
のではないかと心配されている。
「レッドデータ・ブック」入り?
「絶滅危惧業界」?
なぞと、ひそかに、いや、いまではおおっぴらに話されるようになってしまった。
朝日新聞が、三日間にわたって「ネットの荒波」という特集を掲載した。(2010年6月)
出版、音楽、アニメ業界の現状報告と、流通・販売の新しい仕組みを作ろうと模索している具体例を、いくつか紹介している。
出版の話はさておいて、ここではCDの話をしよう。
大手CDショップの<HMV>は、銀座店が6月に、渋谷店が8月に店じまいする。
象徴的なケースとして、あちこちで大きく報じられていた。
<TSUTAYA>による買収話もどうやらご破算となったようだ。
CDの世界においては、すでにして流通のパイプはほとんど機能していなかったが、今後は、パイプそのものがなくなってしまうおそれもある。
ひとびとはCDを買わなくなってしまった。
音楽フアンでさえ、もである。
聴きたいものはYoutubeで無料で聴き、購入も、パッケージとしては買わず、聴きたい曲だけ選んでネット購入する。
そんなご時勢になってしまった。
そんな逆境の中で、新しい取り組みを模索する例が出始めている。
シンガー・ソングライターのまつきあゆむさん。
録音から宣伝・販売までの音楽活動を一人で行っている。
大手レーベルでCDを出していたころは、1枚売れても20円か30円しか手に入らなかった。
ネットを使っての直接販売では、1500円から2000円が自分のものになる。
ネットを使ったこの仕組みを、多くのミュージシャンが利用できるようにしシステム化したのが、おなじシンガー・ソングライターの七尾旅人さん。
そのための独自の配信システムを開発した。
自分で創って、自分で売る。仲介者の手を経ない音楽の産直方式。
ライブ会場での手売りは、以前から行われていたが、スケールがあまりにも小さい。
自前でCDを作るには、少なくとも100万円はかかる。
かかった経費を回収するには、1枚1000円とすれば1000枚売らなければならない計算だ。
気の遠くなるような話ではないか。
ネットに乗せることができれば、規模は飛躍的に広がる。はずだ。
「ジャズの経済学」。
ミュージシャンは、そこまで考えなければならない時代になってしまった。
世の中どんどん変わる。
誰にも止められない。
「音楽の経済学」を避けて通るわけにはいかないのである。
悪いことではない。と思っていますが。
この特集にはもう一つ、「ライブの再発見」という話が取り上げられていた。
ライブを見直すことによって、新しい“需要”を掘り起こすことができるんじゃないか。
坂本龍一さんほか何人かのコメントが興味深い。
「ライブの経済学」も併せ考えなければいけないのではなかろうか。
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