「松ぼっくり」は、当コラム担当Kさんが名付け親。
今年の春、福島の美術館で観たアンドリュー・ワイエスの「松ぼっくり男爵」に一目惚れしていたところだったので、なんかうれしい。
(アンドリュー・ワイエス:松ぼっくり男爵 1976年)
職業「散歩職」は、これだけではなんだかわからない。
解題とはちと大げさだが、ひと言ご説明を。
西江雅之という言語学者、文化人類学者がいる。
1937年生まれ。
異色の研究者として有名らしいが、なにをもって異色というのか、この人の学問の世界をのぞいたことがないのでぼくには分からない。
5年ほど前、たまたま読んだこの人の本にジャズについての文章があった。
音楽の印象を言葉にする、その描写があまりにも的確なのに驚き、<西江雅之>という名前がぼくの頭にインプットされた。
・・・セロニアス・モンクは、それは、特色のある演奏だった。暗闇の中で、なくしたものを見つけ出そうとでもするかのように、彼は手探りで鍵盤から音を一つ一つ拾い出しては室内に放り出していた。
そして、一つの音から次の音に移るまでには、ちょっとした沈黙の時があり、その沈黙の合間に、部屋の窓ガラスを通して遠くの夜汽車の汽笛の音が忍び込んできた(『異郷の景色』)
モンクを知る人には、「なるほど」、だろう。
知らない人には、「それがどうした」、でしかない。
それでちっともかまわない。
ジャズとは、そうしたものだ。
西江雅之先生は、若きころ世界中を旅して回るが、ナイロビ滞在中の出来事を書いたエッセイに、<散歩職>という言葉が出てくる。
・・・ナイロビの夜の淑女たちは、自らの職業を<散歩職=カジ・ヤ・テンペア>と呼んでいた。
一読、気に入り、先生には無断で使わせてもらっている。
定年後、ジャズに一夜の悦楽を求めて徘徊するぼくが、<散歩職>を名乗っても彼女たちは怒りはしないだろう。
「いい思いをしなよ」とにっこり、ウィンクしてくれるに違いない。と思っておりますが。
このブログにたくさんのアクセスがあるように。
引く手あまたの<カジ・ヤ・テンペア>にあやかりたいという気持ちもあるのです。
どうかごひいきに・・・。