メンバーはそれぞれのやり方で音を合わせる。
ピアニストは鍵盤を叩き、ベーシストは弦を弾く。
フォーン奏者は、マウスピースに口をあて、「フーッ」と一、二度、息を通す。
金色の<物>にすぎなかった楽器はいのちを吹き込まれ、生きた<もの>へと変身する。
そんな風に見えてしまう、大好きな瞬間だ。
リーダーの「ワン、ツー、ワンツースリーフォー」の、あるいは「ウッ、ウッ、ウッウッウッウッ」(歓喜の声じゃないよ)のカウントにうながされ演奏が始まる。
静かな、しかし、張り詰めた緊張感が一気にはじけ、躍動する世界が広がっていく。
ライブのスタートには、いつもドキドキさせられる。
この瞬間が楽しみで通っているのかもしれない。
守谷美由貴さん。
香川県出身のアルト・サックス奏者。
大阪音大でクラシックを学び、ジャズに転向。
女性バンドの<BIANCA>(2010年活動休止)、リーダー・バンドの<守谷美由貴クインテット>、女性だけのファンク・バンド<MyaaM>で演奏活動を続けている。
ミュージカル「キャバレー」出演(07年)、テイチクからのCD発売など幅広い活動を行ってきた。
更なる飛躍をはかる時機である。
年内にクインテットのCDを出す予定で、レコーディングはすでに済ませている。
修正なしのアナログ・一発録音というあたりに、守谷さんの意気込みが感じ取れる。
こういう紹介の仕方はなんかきれいごとすぎて、守谷さんには似合わない。
写真のように美人なのだが、ライブで見る彼女はまるで別人だ。
パワフルで男まさり。
クインテット(かむろ耕平gt/石田衛pf/池尻洋史b/今泉総之輔ds)では、男4人を相手に一歩もひけをとらない気迫をみせ、女性だけの「MyaaM」(高澤綾tp/宮脇裕子tp/織原洋子pf/江川綾eb/三科律子ds)では、犬ぞりレースの犬のように、ほかのメンバーを追い立てる。
あんまりよくない例えだが、つまりは、そういう雰囲気をお持ちなのである。
「アタシたちは犬かよ」
メンバーの怒りの声が聞こえてきそうだ。
たとえです。たとえ。
なんせ、長所は気が強く、短所も気が強い。のだ。
座右の銘は、なんとかなる。である。
体育会系を自称し、すべからくポジティブをよしとするが、でも、そんなうわべにだまされてはいけないよ。
単純な「イケイケ」ではない。
クインテットでは、オリジナル中心の“ど・ジャズ”を、MyaaMでは、ファンクやソウルっぽいものをと、違ったテイストのジャズを使い分けて演奏する。
試行錯誤ではない。キチンと狙いを定めての活動である。
頭のいい人なのだろう。
猫好きで、「Cats Cradle(綾取り)」、「Catnap(うたた寝)」なる曲まで作曲してしまった。
猫の名前はうめこ嬢。
ブログをのぞくと、楽しい写真にお目にかかれる。

「Cats Cradle」の譜面である。
たったこれだけの内容で、15分、20分もの長い演奏を軽々と続けてしまう。
初めてのミュージシャンとだって、ろくに打ち合わせなんかしない。
それでも、戸惑わない。間違えない。
そんなジャズの精妙さ、即興演奏のすごさはライブに行かないと味わえない。
彼女の素晴らしさも、ライブで存分に発揮される。
毎日食べてもいいと言う「おはぎ」など手土産に、一度、のぞいてみてはいかがですか。

再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
★Miyuki Moriya(HP)
★美由貴の事情(Blog)
7/23にご紹介した守谷美由貴さんのファーストアルバムが発売になります!
2010年10月6日(水)
『Cat's Cradle』

amazon
1. Tuck Box
2. How About a Little Stroll ?
3. Message
4. Cat’s Cradle
5. Catnap
6. Matching Dice
7. Don’t Blame Me
8. Existence
9. Just a Gigolo
¥2500(税込)
守谷美由貴 alto sax
石田衛 piano
かむろ耕平 guitar
池尻洋史 bass
今泉総之輔 drums