2013年05月27日

普通ではない普通 ─ベーシスト大塚義将さん

ベーシスト大塚義将さん。

1986年、群馬県出身。
13歳でギターを、高校入学時よりベースを始める。
専修大学へ進学、ビッグバンド・サークルへ入部。
ベーシスト、Ray Brownの演奏に感銘を受け、その演奏を手本に独学でベースを学ぶ。
2年次、同大学コンボジャズ・サークル「MJAブルーコーラル」へ入部。
サークルの先輩、奥川一臣p、紺野智之ds氏らからジャズのハーモニー、アンサンブルにおけるベースの役割など、本格的に音楽の指導を受ける。
このときの経験が、現在の演奏スタイルや音楽観に大きな影響を与えており、今なお重要な指針となっている。
現在、自身のトリオを中心に、都内や横浜で演奏活動を行っている。

大塚義将70.jpg


2年前、東中野・セロニアスで初めて大塚さんを聴いた。
サックスの纐纈雅代さんやギターの井上銘さんらと一緒だった。

<スタンダード>がいる!!

が、その時の印象。
何の脈絡もなく、そんな言葉が頭に浮かんでいた。

何故かはわからない。
それに、<スタンダード>って何なんだ。

英和辞典を引くと、こんな訳語が載っていた。

<standard>
1.(比較・判断のための)基準、尺度、手本、見本、水準、標準、規格
2.(度量衡の)原基、原器
3.本位(制)、(金貨・銀貨の)規定純度
4.スタンダード・ナンバー、標準演奏曲目、人気曲目
5.旗
6.普及品、人気商品
7.まっすぐな水道管、立ち木

なるほど、そういう意味だったのか。

すると、大塚さんって、

比較・判断のための基準や尺度になる人?
ジャズの原基?
旗?
普及品・人気商品?
まっすぐな立ち木のような人?

すべての訳語に当てはまりそうでもあるし、すべて違うようでもある。
一体全体、ぼくは、大塚さんの<どこに>スタンダードを感じたのだろうか。

いつも、キチンと背広を着てネクタイを着用している、というイメージがある。
ミュージシャンらしからぬミュージシャン。
大手企業のサラリーマンや銀行員といわれてもなんの違和感もない。
普通の人。

演奏でも決して大見得を切らない。
アトラクティブな動きで人目を引くこともない。

動かず、変わらず、奇をてらわない。
常にどっしりとして、堅実、揺るぎがない。

正統派の落ち着きをいつも漂わせている。

そうか、スタンダードには、正統の意味もあるのか。

---ジャズの魅力は、正解がないこと。その分、ミュージシャンの個性が顕著に出る音楽です

だからこそ、

---ぼくは、共演者の魅力を引き立たせることのできるベーシストを目標にしています

考え方も実に堅実だ。

一見地味そうでいて、いつもそこにいる、いつもそこにいないと場が成り立たない。
堅実であるがゆえの、存在感をお持ちでもある。

スタンダードには、堅実の意味もあったのか。

作家の村上春樹さんは、「僕はものが書けるだけの普通の人間」と自身のことを言う。

大塚さんも、「ぼくは、ベースが弾けるだけの普通の人間だよ」と考えているのかもしれない。

普通を装った普通ならざるもののすごさ、奥の深さを持っている。

スタンダードには、普通という意味もあるようだ。

普通を馬鹿にしてはいけない。
普通は平凡とは違う。

平凡は消え去り、普通が、堅実が、正統が残り、残ったものがスタンダードになる。

そんなことを感じさせてくれるベーシスト。

<スタンダード>がついて離れない。
大塚義将さんです。


≪LIVE INFO≫
・7/10(水) 東中野 Thelonious
大塚義将(b)奥川一臣(p)西村匠平(ds)

・8/9(金) 国分寺 kiki
大塚義将(b)奥川一臣(p)西村匠平(ds)

posted by 松ぼっくり at 00:00 | Comment(1) | TrackBack(0) | ミュージシャン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする