1985年3月生まれ。
静岡県静岡市出身。
両親の影響で幼少のころから音楽に親しみ、ドラムを始める。
中学生のころから地元で演奏活動を始め、吉田桂一、吉岡秀晃、松島啓之、荒巻茂生、富樫雅彦など、多くのミュージシャンと共演を重ねる。
高校卒業後上京。
現在は、都内のライブハウスを中心に演奏活動を行っている。
2002年より、渡辺貞夫のツアーに参加。
Junior Mance、Barry Harrisなどと共演。
2012年8月、アメリカ<サンノゼ・ジャズフェスティヴァル>に宮之上貴昭(g)グループの一員として出演。好評を博す。
いつも何かに怒っている。
感情を表に出さず、わずかな不機嫌さを漂わせた表情でドラムを叩いている。
柏の<NARDIS>でも、吉祥寺の<SOMETIME>でも、沼袋の<オルガンJAZZ倶楽部>でも、この人はいつも何かに怒っているように見えた。
<不機嫌なジャズ・ドラマー>
いつもそう思いながらながら聴いていた。
それが、逆にこの人を強く印象付けていた。
不機嫌さが魅力。
不思議なキャラクターのミュージシャンがいるものだ。
今から半世紀ほどむかしの1950年、60年代は、世界中の若者たちが怒っていた、そんな時代だった。
50年代、イギリスでは、<怒れる若者たち>が文学を中心に大きな社会的ムーブメントをまきおこした。
アラン・シリトーは「長距離走者の孤独」や「土曜の夜と日曜の朝」を書き、不当な社会的差別に抗議の声をあげた。
同じ時代、アメリカでもカウンターカルチャーの大きな渦が国中を吹き荒れる。
この渦は、国境を超え、世界中へ広がっていった。
ビート・ゼネレーションを代表するジャック・ケルアックは「路上」を書き、ヒッピーの圧倒的な支持を受け、映画「イージーライダー」は世界的なヒットとなった。
ジャズもまた、それまでのシート・ミュージックに飽き足りない黒人ミュージシャンを中心に新しいスタイルを目指す試みが、ニューヨークで生まれてくる。
ビバップがやがてハードバップへと進化し、またクール・ジャズやモードなどが登場し、モダンジャズへの道がひろがっていった。
40万人を集めた69年の<ウッドストック・フェスティバル>は、人間性回復のための集会と位置づけられ、この時代の流れの集大成となる。
<怒り>が社会的・文化的ムーブメントの大きな原動力になっていた。
今の若者は、あまり怒らない。
いやそうでもないか。
アメリカでは貧富の格差拡大に抗議する<99%デモ>が、ワシントンから始まり、地方都市へとひろがっている。
<アラブの春>は、いくつかの国の政体を変えた。
ロシアでは、反プーチン・デモが行われ、中国では、残念ながら反日デモが荒れ狂う。
日本の若者は、総じておとなしい。
草食系男子がもてはやされる。
怒らない。
かわりによくキレル。
いつも何かに対して怒っているような横山さんは、だから、よく目立つ。
いったい、何に対して怒っているのだろうか。
沼袋では、蝶ネクタイ姿を披露してくれた。
ライブハウスで見た初めての蝶ネクタイだった。
道具立ての大きな顔。
もみ上げを長めにのばし、気が強そうな一重まぶたの下から強い目が光っていた。
蝶ネクタイは、<憂鬱なダンディズム>を漂わせる横山さんによく似合うファッションだった。
寡黙で、静かでいて、その存在が常に周囲に微妙な圧力波を発信し続けている。
見るたびに「気になる度」が上がっていく。
怒ってなんかいませんよ。
不機嫌なんかではありませんよ。
ご本人はそうおっしゃる。
実際は、暖かな、心優しい人なのかもしれない。
どちらがほんとの<横山和明>なのか、ぼくらにはわからない。
わからないが、ライブを聴きながらそんなことを想像させてくれるミュージシャンなんて、ほかにいない。
いつまでも、不機嫌な<怒れる若者>であってほしいと、勝手ながら熱望している。
横山さんのジャズ観を紹介するのを忘れるところだった。
今ジャズに何か新しい流れがありますか?
・・・新しい流れや現代的な解釈、表現というのは常にあり、音楽もプレイヤーも進化し続けています。
日本では、このところ20-30代の力のある素晴らしいプレイヤーが急激に増え、今、非常に面白くなってきています。
コンテンポラリーな要素が強い人が多いですが、トラディショナルなものに対するリスペクトや愛をしっかり持った上で現代的な表現をしている人が多い。
みんな素晴らしいです。
ジャズの魅力は?
・・・言葉にするのは難しい。
ぼくにとってあまりに身近な存在なので考えたこともない。
何故好きなのかよくわからない。
おいしいものを食べると理屈抜きに感動しますよね。あれと同じ。
構えて難しく考えがちですが、もっと感覚的に摑もうとしなければよくわからないものかもしれません。
目指している方向は?
・・・もっと広く優しく美しい世界を知りたい、もっと大きなグルーヴで包み込んでみんなを踊らせたい。
ぼくのありきたりな質問にも、手抜きせず懇切丁寧に答えてくれた。
前向きで、誠実、正直で、情熱的な人。
<横山和明>は、そんな人だった。のかもしれない。
☆横山和明のblog
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