2012年07月31日

世界をハグする ─ピアニスト、菊池太光さん

一見して(一聴してかな)、これはすごいなと思わされる人に出会うことがある。
そんな一人に、今評判のピアニスト菊池太光さんがいる。

菊池太光.jpg


一昨年、<PITINN>で初めて聴き、「おっ、こんなピニストがいたのか」という強い印象を受け驚かされた記憶がある。
以来、7回ほど彼のライブを聴いてきた。

どんなユニットとの演奏でも、最初の「おっ、・・・」という印象は変わらず、むしろ回を重ねるごとにその感じは強まっている。
ぼくのバカな耳でさえそう感じるのだから、これはやはり相当なもんだろうと思っていたが、あちこちから聞こえてくるミュージシャン仲間や耳の肥えたフアンの菊池評もおおむねそんなところで、ぼくの最初の印象が間違いではなかったことを証明してくれている。

演奏が上手い。
早い。
正確である。
表現力に富んでいる。

おおかたの菊池評である。

天衣無縫。
いつも明るくニコニコしている。
元気。
よくしゃべる。
意外に(失礼)礼儀正しい。
ピアノを弾いているのが楽しくてしかたがない。
楽しさに対する欲求が並外れて強い。

ぼくの印象である。(外見的だな。音楽とはまるで関係ない。なさけない)

<菊池太光>とはどんなミュージシャンなのだろうか。

HPには、プロフィールがない。
いくつかの質問を送ったが、回答してくれたのはプロフィールだけだった。

・・・1985年5月29日生まれ。
幼少よりクラシックピアノを習い始める。高校時代、オスカー・ピーターソンのCDを聴きジャズに傾倒。卒業後ジャズピアニストを志す。
現在、岡崎好朗カルテット、中村健吾トリオ、ピアノトリオGなどで、都内を中心に活動中。

これだけ。
まっ、いっか。
あとは勝手に想像してみるのも楽しいかもしれない。

この世界に飛び込むきっかけとなったというジャズ・ピアニスト、オスカー・ピーターソンを聴くと何かわかるかな。
家に一枚だけあった「NIGHT TRAIN」を聴いてみた。

堂々として迷いがない。
これぞジャズ、といった揺るぎない自信にあふれている。
ジャズのメインストリームを悠々と闊歩している。
少しばかり立派すぎるような気がしなくもない。

しっぽの先までエネルギーが満ち溢れている
とにかく元気な人
通りいっぺんの教養主義を寄せつけない心愉しい気迫に満ちている
「ただただスイングする」という一点にかけたまっすぐな情熱
(最後の四つは、村上春樹さんのピーターソン評{ポートレイト・イン・ジャズ}より。参考までに)

菊池さんは、この黒人ピアニストのどこに惹かれたのだろうか。

人が人に惹かれるわけなんて、そう簡単にわかるわけがない。
したがって、<菊池太光>とはどういうピアニストなのか、なんてそう簡単にわかるわけがない。
・・・わかるわけないだろう
ご本人だってきっとそう言うにちがいない。

ただ、こうとだけは言えそうだなと思えることがある。

この人はピアノを弾いているのが愉しくてしかたがない。のだ。
その愉しさを希求する欲望が並外れて強い。のだ。
その強烈な欲望から照射される目に見えない光線が、周囲の人たちの心と感応し、人々を楽しませ、ウキウキと心躍らせ、スイングさせる。のだ。

彼の発する摩訶不思議なエネルギーを、ぼくは勝手に<ハグ光線>と呼んでいる。

ハグ光線に照射され、聴く人は知らず知らずのうちに<菊池太光>のとりこになってしまう。

愉しくてこそジャズ。
美しくてこそジャズ。

一度ハグ光線にあたると、素直にそう感じられるようになる。

ハグするピアニスト菊池太光さんは、そんなミュージシャンなのです。


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posted by 松ぼっくり at 00:00 | Comment(3) | TrackBack(0) | ミュージシャン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする