受賞者は、
・SOIL&“PIMP”SESSIONS(ニュー・ジャズ部門)
・井上銘カルテット(ニュー・スター部門)
・奥田弦(ニュー・スター部門)
・山中千尋(ジャズ部門)
このほか、小曽根真さん(東日本大震災に対する支援活動)など4部門。
ミュージシャンの優劣より日本のジャズシーンに対する貢献度を重視した選考との、主催者の説明がある。
賞の選考基準には、才能、技術、売り上げ数、話題性などがある。
フアン投票もよく使われる。
今回のような、ジャズに対する貢献度というのはあまり聞いたことがないが、これも立派な基準です。
受賞者の顔ぶれも妥当。
そもそも、才能やテクニックで選ぶといっても、いま活躍中の若い人は、若い人に限らないが、みんなうまい。
甲乙つけがたい。
売り上げ数で選ぶといっても、そのためのデータがない。
<貢献度>という抽象的で少し分かりづらい基準にせざるを得ないというところに、いま日本のジャズがおかれている厳しさがあらわれている、と言えなくもない。
まあ、厳しさは承知の上だ。
それはそれとして、なにはともあれ新しい賞の創設をまずは喜ばなけりゃいけない。
ジャズフアンにとって、こんなにうれしい話はない。
井上銘さんは、本コラムでも紹介したスーパーギタリスト。
奥田弦さんは、なんと10歳の天才ピアニスト。
話題性にはことかかない。
賞は、第一にミュージシャンに対する顕彰であるが、もうひとつ、世間への話題提供という意味も併せ持つ。
「スイングジャーナル」誌をはじめ音楽専門誌が次々に姿を消し、それにともない、各誌が行ってきた<賞>や<フアン投票>もなくなってしまった。
新設されたこの賞が、たくさんのメディアに取り上げられ、「ジャズ、世にはびこる」ための一助になるといい。
先だって、作家に与えられる新人賞としては最高の芥川賞が発表された。
「もらっておいてやろうか」発言で話題を呼んだ田中慎弥さんの「共喰い」は、25万部のベストセラーになった。
なかみはさておき、というか小説の善し悪しは人によって違う。
音楽も同じだ。
点数化することができない世界である。
必ずしも、いいものだから売れる、支持されるとはならない。
話題性をバカにしてはいけない。
小説の世界では、新人賞作家には専任の編集担当者がつく。
編集者は、日常的に作家と接触し、企画を考え、執筆をうながし、原稿を読み、意見を述べ、時に酒を飲み、励まし、議論する。
また、出版社には、販売部があり宣伝部がある。
書店は、日本中どこにでもあり、読者は、好きな本を比較的容易に入手できる。
構造不況業種などといわれながらも、まだまだインフラは整備されている。
音楽の世界には、残念ながらこれがない。
音楽と文学を比べても仕方がないとも思うが、若い才能を支え育てるために必要不可欠なインフラの厚みに、この二つの世界には圧倒的な差がある。
ジャズフアンとしては、それが残念でならない。
活躍中の若いミュージシャンの実力は、文学でいえば新人賞受賞作家かそれ以上。
なんですよ。
「ジャズジャパン」の新しい賞が、彼ら彼女らを支える一助に、さらには、音楽インフラ拡充拡大への突破口になってくれるといい、と、切に希っているのであります。
まてよ、ってえと、今回の真の受賞者は「ジャズジャパン」誌ってことにならないか。
そうだな。それを忘れちゃいけないな。